タイの預金保護は1人1行100万バーツ――対象外の預金と銀行分散の考え方

タイの預金保護は1人1行100万バーツ――対象外の預金と銀行分散の考え方

タイで長く暮らしていると、タイの銀行口座の残高がいつの間にか大きくなっていきます。給与の積み残し、定期預金、退職金の振込。ふと「この銀行が潰れたら、このお金はどうなるんだろう」と考えたことはないでしょうか。

日本には「1金融機関あたり元本1,000万円まで」のペイオフがありますが、タイにも同じ仕組みがあります。ただし上限は100万バーツ。日本円でざっくり400万円台の水準で、駐在員や退職者の預金額としては、正直かなり小さい枠です。しかもこの上限、10年ほど前までは1,000万バーツあったのが段階的に引き下げられてきた経緯があり、日本語の情報は古いものが混ざったままになっています。

この記事では、タイの預金保護庁(DPA)の現行ルールを、日本人が引っかかりやすいポイントを中心に整理します。

1. 結論——保護は「預金者1人×1銀行」で100万バーツ

タイの預金保護は、DPA(Deposit Protection Agency/預金保護庁)が運営していて、現在の保護上限は預金者1人あたり・1金融機関あたり100万バーツ(元本+利息)です。2021年8月11日からこの水準になり、2026年7月時点でも変わっていません(DPA公式の上限ページ)。

押さえておきたいのは「1人×1銀行」の数え方です。

  • 同じ銀行の中では、支店や口座をいくつ分けても全部合算。普通預金と定期預金を分けても、支店を変えても、枠は100万バーツのままです
  • 夫婦の共同名義口座は、名義人ごとに按分して数えます(比率の記録がなければ均等割り)。按分された分は、各自の個人口座の枠と合算されます
  • 外国人も保護対象です。タイ国内のバーツ建て口座であれば、国籍は問われません

上限の推移も簡単に。2018年までは1,000万バーツ、2019年8月から500万バーツ、そして2021年8月から現在の100万バーツになりました(コロナ禍で引き下げが1年延期された経緯があります)。「タイは500万バーツまで保護される」という記述を見かけたら、それは古い情報です。

2. 対象になる預金・ならない預金

保護されるのは、タイ国内で開設したバーツ建ての、当座預金・普通(貯蓄)預金・定期預金・預金証書・預金受取証の5種類です(DPA公式の対象商品ページ)。

対象外のほうが大事なので、日本人が引っかかりやすい順に並べます。

  • 外貨預金(FCD口座):バーツ建てではないので対象外。円やドルのまま置いている預金は保護されません
  • 非居住者バーツ口座(Non-Resident Baht Account):本帰国後などにタイの「非居住者」として保有するバーツ口座は、法律で明示的に保護対象から除外されています
  • 投資信託(RMF・SSF等を含む)・株式:預金ではないので対象外。ただしこれらは銀行の資産と分別管理される別の仕組みで守られており、「保護ゼロ」という意味ではありません
  • 貯蓄型の保険商品:銀行窓口で買っても、発行元は保険会社なので預金保護の対象外
  • 電子マネー(e-Wallet残高)・暗号資産:対象外

銀行のアプリの残高画面には、預金も投信も保険もひとまとめに表示されますが、預金保護の目で見ると全部扱いが違う。ここが今回いちばんお伝えしたいポイントです。

3. どの銀行が対象か

DPAの保護対象になっているのは、タイの商業銀行・外国銀行支店などの民間金融機関で、2026年7月時点で33機関です(DPA公式FAQによる。内訳は国内商業銀行17・外銀支店11・ブランチレス銀行1・金融会社1・クレジットファイナンス3)。バンコク銀行、カシコン銀行、SCB、クルンタイ銀行、アユタヤ銀行(クルンシィ)、TTBといった日本人がよく使う銀行は、いずれも商業銀行としてこの枠組みに入っています。

2026年に開業したタイ初のバーチャルバンク(Clicx)についても、通常の商業銀行と同じ基準で預金保護を適用する方針が示されていると報じられています。新しい形態の銀行を使う場合も、基本は同じ枠組みと考えてよさそうです。

一方で、政府系の特殊金融機関(政府貯蓄銀行GSB、農業協同組合銀行BAAC、政府住宅銀行GHBなど)はDPAの対象外です。こちらは財務省の監督下で別の保証の枠組みがあるとされ、「対象外=危ない」という意味ではないのですが、民間銀行とは制度が違うことは知っておいてください。信用組合・協同組合の預金も対象外です。

4. 銀行が破綻したら、実際どうなるか

まず前提として、タイで商業銀行が破綻して預金保護が発動された例は、1997年のアジア通貨危機以降ありません。この記事は「タイの銀行が危ない」という話ではなく、制度の枠を知ったうえで置き方を決めましょう、という話です。

そのうえで、法律上の建付けはこうなっています。銀行の免許が取り消されると、DPAが補償手続きを公示し、保護枠内(100万バーツ)の預金が支払われます。法律上は「免許取消から7日以内に資産移管 → 40日以内に受付公示 → 受付から30日以内に支払い」という日数が定められているので、枠内のお金はおおむね1〜2ヶ月程度で戻り始める設計です。細かい受け取り方法(外国人の本人確認手続きなど)は公式情報で確認しきれなかったので、ここは断定しません。

問題は100万バーツを超えた部分です。超過分は破綻した銀行の清算手続きの中で配当を待つことになり、いくら戻るか・いつ戻るかは清算次第。つまり「確実に・すぐ守られるのは1行100万バーツまで」と考えておくのが安全側です。

5. 銀行分散の考え方

ここまでの仕組みを踏まえると、選択肢は素直です。

  • 複数の銀行に分ける:枠は「1人×1銀行」ごとに付くので、3行に分ければ300万バーツまで保護枠に収まります。同じ銀行の別支店・別口座では意味がない、という点だけ間違えないように
  • 夫婦で分ける:枠は人ごとにも付くので、夫婦それぞれの名義口座に分ければ、同じ銀行でも合計200万バーツまで枠が使えます。ただし名義人のお金であることが前提です(贈与や相続の論点は別途あります)
  • タイに置く必要のないお金は日本へ戻す:生活費と近い将来使うお金以外をタイのバーツ預金で持ち続ける必然性は、実はあまりありません。日本への送金手段は 日本⇔タイの海外送金の記事 にまとめています
  • 金利目当てで1行に集めない:タイの定期預金の金利はたしかに日本より高めです(政策金利は2026年時点で1.00%、定期預金で1〜2%台が目安)。ただ、キャンペーン金利のために保護枠を大きく超えて1行に集めるのは、リターンに対してリスクの取り方が釣り合いません。銀行の選び方は タイの銀行の記事 をどうぞ

僕自身もタイの銀行には複数の口座がありますが、「どの箱にいくら入っているか」を書き出して、預金・投信・保険を色分けしてみると、置き方の判断がしやすくなります。

6. まとめ——口座を残して帰国する人こそ確認を

最後に、この話が特に効いてくるのは本帰国後もタイに口座を残す方です。帰国後は口座の状態(居住者か非居住者か)によって保護の扱いが変わり得ますし、いざというとき日本からの手続きは、タイにいるときの何倍も面倒になります。残高の置き方は、タイにいるうちに整えてから帰るのがおすすめです。口座を維持したまま帰国する方法は こちらの記事 に、帰国前のお金の手続き全体は 本帰国のやることリスト にまとめています。

タイでのお金の全体像は タイ在住日本人のお金の教科書 からどうぞ。

※この記事は2026年7月時点の情報です。保護上限や対象は制度変更があり得るので、大きな金額を動かす前にDPA公式サイト(dpa.or.th)で最新の条件を確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました