
タイで働いていると、毎月の給料から社会保険料が天引きされています。長年750バーツだったこの保険料、2026年1月から変わったのをご存じでしょうか。
僕はタイに来て25年、ずっとこの社会保険(プラカンサンコム)のお世話になってきました。この記事は2017年に「登録病院の選び方」を中心に書いたものですが、2026年の制度改正を機に、保険料のしくみから7つの給付、そして意外と知られていない「払った保険料が戻ってくる話」まで、全面的に書き直しました。
2026年1月からの変更点
まず今回の改正のポイントです。保険料を計算するときの「月給の上限」が、約30年ぶりに引き上げられました。
| 期間 | 賃金上限 | 本人負担の上限(5%) |
|---|---|---|
| 〜2025年12月 | 15,000バーツ | 750バーツ |
| 2026年〜2028年 | 17,500バーツ | 875バーツ |
| 2029年〜2031年 | 20,000バーツ | 1,000バーツ |
| 2032年〜 | 23,000バーツ | 1,150バーツ |
日本人の給与水準ならほぼ全員が上限に当たるので、実質「毎月750バーツだったものが875バーツになった」ということです。会社も同じ額を負担しています。
取られるものが増えただけではなくて、給付の上限も連動して上がります。あとで出てくる傷病手当や失業給付、それに老齢年金の額も、この上限を基準に計算されるからです。
タイの社会保険の基本
タイの会社に雇われて働く人(現地採用も駐在員も)は、原則として全員が社会保険に加入します。労働法上の「33条被保険者」という区分です。保険料は月給の5%、上の表の上限つき。手続きはすべて会社がやってくれるので、本人は給与明細で天引きを確認するくらいです。
会社を辞めたあとに任意で継続する「39条」、自営業者などが入る「40条」という区分もありますが、この記事は33条(会社勤めの人)を前提に書きます。
社会保険でもらえる給付は、大きく7つあります。
| 給付 | ざっくり言うと |
|---|---|
| 医療(傷病) | 登録病院での治療が原則無料 |
| 傷病手当 | 病気やケガで働けない間の所得補償 |
| 出産 | 出産一時金15,000バーツ+産休中の所得補償 |
| 児童手当 | 子ども1人につき月1,000バーツ(6歳まで) |
| 障害 | 障害が残ったときの年金と医療 |
| 死亡 | 葬祭料と遺族への給付 |
| 老齢 | 55歳からの年金または一時金 |
これに加えて、退職・失業したときの失業給付もあります。以下、日本人に関係の深いものから順に見ていきます。
医療給付:登録病院の選び方がすべて
社会保険のいちばん身近な使い道が医療です。自分で選んで登録した病院なら、外来も入院も原則無料。薬代も含まれます。
ただし「登録した病院で」というのがポイントで、使い勝手は病院選びでほぼ決まります。
- 社会保険に参加している病院の中から選びます。国公立だけでなく、評判のいい私立病院も参加しています
- 参加病院のリストは社会保険事務所(SSO)のサイトやアプリで確認できます
- 会社の近くか家の近くか、日本語や英語が通じるか、待ち時間はどうか。このあたりが選ぶ基準になります
登録病院は年に1回、変更のチャンスがあります。例年12月16日から翌年3月31日までが受付期間で、SSO のアプリ(SSO Plus)やサイト、LINE から手続きできます。引っ越しや転職で通えなくなった場合は、期間外でも30日以内に届け出れば変更できます。「入社時に会社が適当に決めた病院のまま」という人は、一度見直してみる価値があります。
歯科だけは特別で、登録病院に関係なく、社会保険に参加している歯科医院で年間900バーツまで使えます。クリーニングや簡単な治療なら、これでほぼまかなえます。
傷病手当と失業給付:働けないときの補償
病気やケガで医師から休業を指示されたときは、傷病手当として給与の50%(上限あり)が支給されます。1回の病気につき90日、年間では180日が上限。会社の有給病欠を使い切ったあとの長期休業をカバーするものです。
会社を辞めたとき・辞めさせられたときは失業給付があります。会社都合なら給与の50%を最長180日、自己都合でも30%を最長90日。現地採用の方が転職の合間にもらえる、意外と知られていない給付です。もらうには退職から30日以内に労働省のサイトで失業登録をする必要があるので、辞めることが決まったら早めに準備しておいてください。
出産と児童手当:家族がいる人はけっこう大きい
出産では一時金として1回あたり15,000バーツが出ます。奥さんが働いていない場合でも、ご主人側の社会保険から申請できます。働いている女性本人の出産なら、これに加えて産休中の所得補償(給与の50%×90日分)もあります。
子どもが生まれたあとは児童手当です。2025年1月に増額されて、子ども1人につき月1,000バーツが6歳まで支給されます(同時に3人まで)。6年間で7万バーツを超えるので、申請しない手はありません。受け取り方は別記事に詳しく書いています。
払った保険料は、退職時に戻ってくる
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。
毎月天引きされている保険料のうち、本人分と会社分を合わせた一定額が「老齢給付」として積み立てられています。タイで働くのをやめて日本に帰った人も、55歳になれば申請してこのお金を受け取れます。
- 加入期間が180ヶ月(15年)未満の人:積み立てた保険料が一時金として戻ってきます。数年勤めた人で数万バーツ、10年勤めた人なら10万バーツを超えるイメージです
- 180ヶ月以上の人:一時金ではなく、終身の年金になります
「もうタイを離れて何年も経つけど、もらえるの?」という方も大丈夫です。時効で消えたりはしません。何年働いていたか、いくらぐらいになるかの目安は、こちらの記事に診断ツールと早見表を載せています。
ひとつだけ注意点を。会社を辞めたあとに39条で任意継続をすると、老齢給付の計算に影響が出る場合があります。将来の年金を意識している方は、継続する前に一度確認してみてください。
在職中のうちに控えておくべきもの(社会保険番号・給与明細・電話番号など)は、タイ駐在中に押さえておくべき6つのことにまとめました。辞める前にぜひ一度目を通してみてください。
医療保険との組み合わせ方
社会保険があるなら民間の医療保険はいらないかというと、そうでもありません。登録病院以外での受診や、駐在員がよく使う日系対応の私立病院は社会保険ではカバーされないからです。
僕自身、2017年に体調を崩して入院したことがあります。治療費は総額88,000バーツ。このときは民間の医療保険から約80,000バーツ、社会保険から約8,000バーツが出て、自己負担はほぼゼロで済みました。社会保険を「ベース」、医療保険を「上乗せ」と考えて組み合わせるのが、僕の経験上いちばん安心です。
医療保険の選び方はこちらにまとめています。
まとめ
- 2026年1月から保険料の上限が875バーツに(給付の上限も連動して増額)
- 医療給付は登録病院選びで使い勝手が決まる。変更は年1回のチャンス(12月中旬〜3月末)
- 歯科は年900バーツ、児童手当は月1,000バーツ×6歳まで。使える給付は意外と多い
- そして、払った保険料は退職後に戻ってくる。タイを離れた人こそ老齢年金の記事をチェックしてみてください
毎月875バーツ、年間1万バーツ超を払っている制度です。せっかくなので、しっかり元を取ってください。
そして退職後にタイに住み続けるのか、日本と行き来するのか——その選び方はタイ長期滞在ビザの選び方【2026年版】にまとめました。ワークパーミットを失うタイミングが、年金申請のタイミングでもあります。
最終更新:2026年7月


コメント
どうもはじめまして。タイ在住2年がたちました。いつもブログ楽しく拝読しております。タイ生活に便利な情報を配信してくれて有難うございます。さて、社会保険に関する記事を拝読いたしました。歯科の治療費を申請できるとの事ですが、後日の申請はどのように行うのでしょうか。もし宜しければ教えてください。
歯科診療後にお金を払ったら、「ขอใบเบิกประกันสังคมครับ」(社会保険の申請用紙をください)と書いた紙を見せて、もらった申請用紙と、パスポートのコピー、銀行通帳の写しを会社の総務に渡し、社会保険事務所に申請してもらってください。1ヶ月程度で口座に振り込まれます。