この記事では、タイで働き、個人所得税を納めている方に向けて、タイで個人所得税を節税するための方法と、実際の手順について解説しています。
タイでは、個人ができる節税の手段がいくつもあります。
面倒くさいから、、、よくわからないから、、、と放っておくと、毎年数万バーツも税金を多く納めることになります。長年に渡り節税し、それを複利で運用した人と、何もせずに放っておいて税金を支払った人では、10年、20年と経ったとき、どれぐらい差がつくでしょうか。
いまからでも遅くありません。もしいままで節税をしていなくても、この記事を読んで、今年から節税を初めてみてはいかがでしょう?
目次
タイの個人所得から控除できる金額
タイの個人所得からは、以下の金額を控除できます。
- 本人控除 6万バーツ
- 配偶者控除 6万バーツ 配偶者が無収入であること 本人または配偶者の両方に収入がある場合は、合算して最大12万バーツまで控除
- 子供控除 1人あたり3万バーツ 2018年以降に誕生した2人目以降は1人あたり+3万バーツ
- 60歳以上の父母の扶養控除 本人と配偶者の父母1人あたり3万バーツ 最大4人まで
- 障がい者扶養控除 1人あたり6万バーツ
- 妊娠・出産控除 実際にかかった費用を最大6万バーツ
- 生命保険控除 最大10万バーツまで 満期10年以上 配偶者が無収入で、年間を通じて結婚してるなら、配偶者保険を最大1万バーツ ここには、本人の医療保険控除を2万5千バーツまで含めてよい
- 両親医療保険控除 1人あたり最大1万5千バーツ
- 健康保険控除 自分の健康保険を最大2万5千バーツ ただし7.生命保険控除との合算額は最大10万バーツ
- 退職積立基金(プロビデントファンド)控除 最大50万バーツ ただし1万バーツ超の分は課税所得の15%以内
- 退職投資信託(RMF)控除 課税所得の30%以内(2020年に15%→30%へ) 10.退職積立基金+11.RMF+12.年金保険控除+14.SSFの合算額は最大50万バーツ
参考 RMF詳細解説 - 年金保険控除 最大20万バーツ ただし課税所得の15%以内 契約期間10年以上 受給期間は、開始が55歳以降で、終了が85歳以降であること 10.退職積立基金+11.RMF+12.年金保険控除+14.SSFの合算額は最大50万バーツ
参考 年金保険の詳細解説 - 公的貯蓄基金控除 RMFと合算して最大50万バーツ
- スーパー・セービング・ファンド(SSF)控除 最大20万バーツ ただし課税所得の30%以内 要保有期間10年以上 10.退職積立基金+11.RMF+12.年金保険控除+14.SSFの合算額は最大50万バーツまで
参考 SSFの詳細解説 - 住宅利子控除 最大10万バーツ
- 社会保険控除 実支払額(通常は750バーツ x 12ヶ月 = 9千バーツ、2020年は軽減措置があり5,850バーツ、コメント欄に詳細あり)
- 寄付金控除 教育・スポーツ期間への寄付は寄付額の2倍、それ以外への寄付は実支払額 ただし課税所得の10%以内
- 買い物減税 2022年1月1日~2月15日に買い物すると最大3万バーツを控除可 2022年のみ
参考 買い物減税の詳細解説 - 経費控除 10万バーツ
(情報源:タイ歳入局 [PDF]、iTAX [ウェブサイト])
1~6, 16, 19 は申請するだけで控除されますが、7~18 は自分から投資・購入しなければ控除されません。
例えば、控除後の課税所得が100万バーツの人が、10万バーツの生命保険を買うと、10万バーツを控除できますので、課税所得は90万バーツになります。
所得100万バーツに対する所得税は115,000バーツ、所得90万バーツに対しては95,000バーツですので、2万バーツの節税になります。そして生命保険は元金+利子が戻ってきます。節税は損にはならないので、できる限りやった方が得です。
では、どれを優先してやるべきでしょうか? それを次の項で説明します。
おすすめの節税手段
節税をするためにはお金が必要です。いま、節税のためにいくらまで使えるか?というあなたの予算によって、できることは変わってきます。
ここでは優先順位をつけて、節税の手順を解説します。あくまで一例ですが、上から順に節税をしてみてはいかがでしょう。
1. 生命保険控除 本人分10万バーツ+配偶者分1万バーツまで
まず、生命保険を契約しましょう。
これは、無リスクで貯金ができる、貯蓄型の生命保険です。通常は、毎年1回の掛金を5年ほど支払って、10年後以降の満期になると、掛金の全額+利子が返ってきます。
銀行などで相談すると、満期15~20年の保険を勧められることが多いのですが、所得控除に使えるのは、満期10年以上の保険です。最近は、満期10年のプランを販売している保険会社が少なくなり、満期15年程度のプランを提案されることも多くなりました。担当の方にお願いして、できるだけ満期までの期間が短いプランを作ってもらいましょう。
金額は、10万バーツまでのいくらでも構いません。余裕がなければ年1万バーツでも良いと思います。初年度の利回りは、節税分15~25%+保険の運用利率1~2%=16~27%になりますので、銀行の定期預金で年1~2%をもらうよりも確実に得です。
2. 退職投資信託(RMF)控除 退職積立・RMF・年金保険・SSFと合算して最大50万バーツ ただし課税所得の30%以内
RMF も SSF と同じく投資信託で、銀行が複数の商品を販売していますので、そこから選んで購入すると節税できます。ただし、SSFが足掛け10年で売却できるのに対して、RMFは5年以上保有し、かつ55歳にならないと売却できません。
会社で退職積立基金に加入している場合は、その掛金もこの枠に含まれます。
RMF の詳細については、別記事「タイの RMF(退職投資信託)情報まとめ」をご覧ください。
RMF の初年度利回りは、SSF と同じく、節税分15~25%+RMFの運用利回り5%=20~30%と考えればよいと思います。
3. 年金保険控除 最大20万バーツ 退職積立・RMF・年金保険・SSFと合算して最大50万バーツ
それでもまだ資金の余裕があるなら、年金保険を購入すると良いでしょう。詳細については、こちらの記事「タイの年金保険」をご参照ください。ただし利回りは、上記の生命保険・LTF・RMFほどお得ではなく、銀行の定期預金よりもちょっと良い程度です。
年金保険+RMF+退職金積立+SSFを合算して最大50万バーツまで所得を控除できます。
以上の控除手段を全て行うと・・・?
例を挙げて計算してみましょう。仮に課税所得が100万バーツで、
- 生命保険控除:10万バーツ
- 長期投資信託(SSF):20万バーツ
- 退職投資信託(RMF):10万バーツ
- 計40万バーツ
を購入したとします。
控除目一杯使った場合の上限は、生命保険 10万バーツ、SSF+RMF 50万バーツの計60万バーツなんですが、所得100万バーツで60万バーツを貯金するのもムリがありますので、ここでは仮に40万バーツとしてみました。
この場合、所得の100万バーツから40万バーツを控除して、課税所得は60万バーツに減ります。所得100万バーツに対する所得税115,000バーツが、所得60万バーツに対しては42,500バーツになりますので、年間72,500バーツ(=月あたり6,041バーツ)の節税です。
このうち、生命保険とSSFに使った計30万バーツは10年、RMFの10万バーツは55歳まで引き出せなくなります。あまり無理な節税はやめておきましょう。節税は計画的に!
個人所得税の計算は、こちらのタイ個人所得税計算機が便利です。
毎年少しずつでも、積み重なれば大きな金額になります。もしいままでは節税をしたことがなくても、今年から初めてみてはいかがでしょうか?
実際に節税をする手順
実際に投資商品を購入し、節税する手順を簡単に説明します。
1. 投資商品を購入
まずは投資商品を購入します。購入できる場所は、
・SSF/RMF:銀行、証券会社
・生命/年金保険:保険代理店、保険エージェント、銀行
といったところです。
僕の場合は、SSF/RMFはアユタヤ銀行のネットバンキングで購入し、保険は KS Lifeさんにお願いしています。
2. 購入証明書を入手
節税のためには、SSF/RMFや保険の購入証明書が必要になります。通常は、年明け頃になると、郵送されてきたり、ネットでダウンロードできるようになります。
アユタヤ銀行のSSF/RMFならネットバンキングから、アリアンツ・アユタヤ社の保険ならスマホアプリからダウンロードできます。
3. 確定申告を行う
毎年3月31日までに、前年分の確定申告を行う必要があります。
会計事務所に税金の計算を依頼している方は、購入証明書のコピーを会計事務所へ送って、確定申告書を作成してもらいましょう。
自分で確定申告をしている方は、下記のブログを参考にしてください。内容は2016年度のものですが、現在でもほとんど変わっていないはずですので、特に問題はないと思います。
ちなみに所得税の計算方法は以下の通りです。
- 収入から退職積立基金の1万バーツを超えた分と、経費(10万バーツ)を引きます。これが所得です。RMFの上限はこの所得の30%までになります。SSFも同様です。
- この所得から、RMF、SSF、生命保険、年金保険、社会保険、退職積立基金の1万バーツまでの分などを引きます。これが課税所得です。
- この課税所得に対して所得税を計算します。
4. 還付金を受け取る
2022年現在は、確定申告後に小切手が郵送されてくるようです。小切手を持って銀行へ行けば口座に預け入れできます。
日本語で相談できる保険代理店
僕の場合は、生命保険・年金保険を KSライフの片桐さんにお願いしています。日本語で相談できますので、保険に興味がある方は、問合せてみてください。電話・メールのレスポンスも早く、親身になって相談に乗ってくれる方です。
KS Life の原さんに了承をいただいて、連絡先を掲載しておきます。「ランシット日記」を見たとお伝えください。
KSライフ 担当:片桐さん
電話:097-098-4091
電子メール:info@thai-hoken.com
コメント
RMFのMAX購入額についてですが、「課税所得の30%まで」の「課税所得」とは、所得から本人控除6万バーツ等を控除した後の金額のことになるんでしょうか?
その通りです。
所得から各種控除を引いた額が課税所得です。
早速のご回答ありがとうございます。
ということは、生命保険やRMF自体の控除も差し引いてから、残った金額が課税所得額になるということで合ってますでしょうか?
その残った課税所得額の3割まで買えるということですか?
mayamaya さん
コメントありがとうございます。
「所得から各種控除を引いた額が課税所得です」と回答しましたが、昨年の確定申告書を確認したところ、間違っていましたので訂正させてください。
まず、収入から退職積立基金の1万バーツを超えた分と経費(10万バーツ)を引きます。これが所得です。
RMFはこの所得の30%までです。SSFも同様です。
所得から、RMF、SSF、生命保険、年金保険、社会保険、退職積立基金の1万バーツまでの分などを引きます。これが課税所得です。
この課税所得に対して所得税を計算して、払いすぎていたら還付、不足なら追加で納付します。
正確にはこのような計算になります。
間違った回答をしてしまい申し訳ありません。
nisizawaさま
ご丁寧に説明いただきまして、ありがとうございます。大変良く分かりました。RMF購入の参考にさせていただきます。
所得税の控除ですが
●経費控除(2019年から)100,000THB
3.子供控除:1人30,000THB ※但し、2018年以降に生まれた子に関しては追加で30,000THB
●出産費用控除:本人(もしくは配偶者)が出産及びそれに関わる健診費用を最大60,000THB/1回あたり控除可能 ※課税年度を跨いだ場合にはいずれか片方の年度のみ
が追加・修正かと存じます。
出産に関しては私のタイ人妻が年末~年始のいずれかで出産予定ですので、詳細を確認してみました。
間違えました
本人控除(2018年まで)60,000THB→(2019年から)100,000THB
経費控除(2018年まで)30,000THB→(2019年から)60,000THB
でした。
ちくたゆさん、ありがとうございます。
いただいた情報を確認しまして、子供控除、出産控除を修正しました。
お礼申し上げます。
本人控除と経費控除については、私の確定申告書を確認してみたところ、以下のようになっていました。
本人控除(2016年まで)30,000THB→(2017年から)60,000THB
経費控除(2016年まで)60,000THB→(2017年から)100,000THB
16.社会保険控除 実支払額(750バーツ x 12ヶ月 = 9千バーツ)
ですが、通常だと年間9,000THBですが
2020年度はコロナによる政府支援として、個人負担分が軽減されています
3月~5月の3ヶ月=150THB×3
9月~11月の3ヶ月=300THB×3
ですので、(750THB×6ヶ月+(150THB×3ヶ月)+(300THB×3ヶ月)
合計5,850THBが2020年の社会保険控除額となるかと存じます。
kuroさん、ありがとうございます。いただいた情報を基に、社会保険の項に追記しました。
今年2月よりタイ赴任しております。
初めての確定申告を迎えるにあたり、節税について勉強させてもらっています。
所得税率30%なのですが、生命保険(10万バーツ)以外に、RMFか年金保険か迷っています。
一般的に赴任者の場合、会社の帰国命令その他事情により、いつタイ所得でなくなるか分からないため、年金保険よりもRMFの方が積立金が自由に変更できるのでおすすめなのでしょうか。
RMFと年金保険でしたら明らかにRMFです。
計算は割愛しますが、年金保険では、所得税の還付を受けて、最高のリターンが得られるタイミングで解約しても、年利回りは6.5%がせいぜいです。年金をもらい続けた場合は年4.2%くらいにしかなりません。
RMFでしたらRMF自体の利回りにもよりますが、S&P500の平均リターンが6~7%、これに税還付が加わりますので、年金保険の利回りを簡単に上回ります。
昔はRMFの上限額が低かったため、RMF+年金保険という運用でやらざるを得ませんでした。僕も当時加入した年金保険をいまでも続けています。いまは制度が変わりましたので、RMF一本で十分です。
早々のご返信ありがとうございます。
RMFですと、私は英語もタイ語もだめなので、日本語デスクのあるアユタヤ銀行で手数料率等を考慮して、超低リスク低リターンのKFCASHRMFを考えていますが、これですと年金保険とあまり変わらない感じですかね。
はい、KFCASHRMF でしたら、年金保険と同じで、ほぼ定期預金と考えてよいと思います。
低リスクに所得控除だけ受けるのでしたら、KFCASHRMFはとても良い選択だと思います。
2021年からSCB銀行のSSFを購入しました。
自社の経理に担当に購入証明書は渡しました。自社の経理担当→委託会計会社に提出したようですが、自社の経理担当はSSFを知らず、この後、どのように還付金を受け取ったり、申請したりするかよくわからないと回答されます。
還付金の申請から受け取りなど、ざっくりでも構いませんので、教えて頂けますか?
大まかな流れを書きますと、
SSF等への投資→証明書の入手(ここまではできていますね)→確定申告書(PND90 または PNG91)の作成・署名→確定申告書を税務署に提出し、追加納税または還付を受ける
次にすべきは会計事務所が作成した PND90 または PNG91 を確認することだと思います。
ありがとうございます。 早速、PND90、PNG91について確認してみます。
お世話になります。
18: 経費控除
とはどんなものでしょうか?
何かレシートなどを提出して証明するのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
経費控除は、無条件で「所得の50%、最大10万バーツ」が控除されるというものです。
通常は所得は20万バーツ以上でしょうから、10万バーツの控除になります。
領収書も何も必要ありません。
ありがとうございます!
度々失礼します。
タイ歳入局のサイトに今年から新しい項目(18)が追加されているようです。
https://www.itax.in.th/pedia/%E0%B8%84%E0%B9%88%E0%B8%B2%E0%B8%A5%E0%B8%94%E0%B8%AB%E0%B8%A2%E0%B9%88%E0%B8%AD%E0%B8%99/
ありがとうございます。
これは本記事の 17.買い物減税 のことですね。
あと、itax.tn.th は公的機関ではなく、民間企業のようです。
何度もすみません。
https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/invest_04.html
このサイトの個人所得税の控除のところに
「納税者本人の健康保険料控除:最高2万5,000バーツ。」
というのもあると書かれています。
Nishizawaさんのリストにはないので、古い情報でしょうか?
志村さん
ご指摘ありがとうございます。書き漏らしていたようです。さきほど追記しました。
さらに度々ですみません。
17の寄付金ですが、具体的に寄付先はどうやって見つけるものでしょうか?
還付金のための正式な書類を出してくれる寄付先を見つけたく思っています。
それはわからないです。
いわゆるレスキューに寄付していた方は控除したと言っていました。ガルーダの印がある領収書なら控除できると聞いたこともあります(不確かです)。
お役に立てずスミマセン。
ほんど何度もすみません。
寄付の「教育・スポーツ期間への寄付は寄付額の2倍」の意味が気になって仕方ないのです。
これは例えば5万バーツを寄付したら10万バーツ還付されるということでしょうか?
そんな美味しい話あるわけないですよね。。。あったら誰もが最大限活用してるはずですよね。
いえいえ、ご遠慮なく。
5万バーツ寄付して、10万バーツ控除されても、還付される金額は10万バーツ x 所得税率です。
例えば所得税率15%なら15,000バーツが還付されます。10万バーツが還付されるわけではないです。
何度もご返信ありがとうございます。
最も基本的なこと理解していなかった自分に気が付きました(恥)。
それも寄付はRMFなどと違い自分への投資でないので、税金還付という目的ではあまり意味ないですね(善意にはなりますが)。
こんにちは。
いつも情報を発信いただきありがとうございます。
記事に
最高額は SSF+RMFで50万バーツの計70万バーツとあります。
何回か記事を読んでも最高額70万バーツになる組み合わせがわかりませんでした。
可能でございましたら70万バーツになる組み合わせをお教えいただけますでしょうか。
宜しくお願いいたします。
kazuoさん
ご指摘ありがとうございます。
『最高額は SSF+RMFで50万バーツの計70万バーツなんですが、所得100万バーツで70万バーツを貯金するのもムリがありますので、ここでは仮に40万バーツとしました』
という箇所ですね。
仰るとおり、上限の70万は間違いで、正しくは60万でした。お詫びいたします。
以下のように書き直しておきました。
『控除目一杯使った場合の上限は、生命保険 10万バーツ、SSF+RMF 50万バーツの計60万バーツなんですが、所得100万バーツで60万バーツを貯金するのもムリがありますので、ここでは仮に40万バーツとしてみました』
ご返信をいただきありがとうございました!
理解いたしました!