
日本からタイへ生活費を送る。タイの給料や貯金を日本へ戻す。駐在でも、現地採用でも、ロングステイでも、タイと関わって暮らしていると「国をまたいだお金の移動」は必ずついて回ります。
僕はタイに来て25年になりますが、この間に送金の風景は様変わりしました。昔は銀行の窓口で書類を書いて数千円の手数料を払い、着金まで数日待つのが当たり前。それが今は、スマホで数分、手数料は銀行の数分の一です。
先に結論を書きます。2026年時点で、個人の日本⇔タイ送金はWise(ワイズ)が基本です。理由は手数料が安いことと、その手数料が「いくら取られているか」まで含めて明示されること。僕自身もWiseのアカウントを持っていて、日本とタイの間のお金のやり取りに使っています。
ただし、2026年はタイのWiseにとって大きな節目の年です。タイ住所で登録したアカウントには、8月3日から新しい制限がかかります。一方で日本住所のアカウントは従来どおり。つまり「あなたがどちらの住所でWiseを使っているか」で答えが少し変わる。この記事では、手数料の比較からWiseの使い方、8月の規制変更、送金にまつわる税金の注意点まで、2026年7月時点の情報で整理します。
目次
1. 日本→タイ送金の選択肢と手数料比較
まず、日本からタイへ送るときの選択肢を並べます。大きく分けると「銀行の外国送金」と「Wiseのような送金サービス」の2つです。
銀行の外国送金で見落としやすいのは、手数料が一段ではないことです。送金手数料のほかに、中継銀行が抜く「関係銀行手数料」(2,500〜3,000円程度が相場)、タイ側の銀行が着金時に差し引く受取手数料(0.25%程度、最低200〜300バーツ・最高500バーツ。銀行により差があります)、さらに為替レートへの上乗せ(スプレッド)が乗ります。パンフレットの「送金手数料」だけ見ていると、実際のコストを大きく見誤ります。
主なところの送金手数料はこんな感じです(2026年7月時点、各行公式サイトで確認)。
- 三菱UFJ銀行: ネット2,500〜3,000円、窓口7,000円。別途、円建て送金には円為替取扱手数料0.05%(最低2,500円)
- 三井住友銀行: ネット2,500〜3,500円、窓口7,000〜7,500円。関係銀行手数料を送金人負担にすると+2,500円
- 楽天銀行: 750円。ただし中継銀行手数料1,000円(送金人負担の場合)と為替上乗せは別
- ソニー銀行: 3,000円。支払銀行手数料を負担する場合は+3,000円
- SMBC信託銀行プレスティア: 通常3,500〜7,000円。ゴールド系会員は無料(Global Transferの無料条件あり)
- ゆうちょ銀行: 窓口・ゆうちょダイレクトの国際送金は2025年8月で終了。現在はWeb完結の「ゆうちょの国際送金」のみ
対してWiseは、為替レートに上乗せをせず(ミッドマーケットレートをそのまま適用)、手数料を別建てで明示する方式です。この記事を書くにあたって、実際に10万円を日本からタイへ送る条件でシミュレーションしてみたところ、手数料は1,333円、着金額は20,283.57バーツと表示されました(2026年7月10日時点。レートと料率は日々変わるので、最新はWiseの公式サイトで確認してください)。
10万円の送金で比べると、銀行経由は送金手数料+関係銀行手数料+タイ側受取手数料で5,000円を超えることが珍しくなく、そこに見えにくい為替スプレッドが加わります。Wiseは1,333円ですべて込み。この差が「個人の日タイ送金はWiseが基本」と言い切る理由です。
なお、Wiseの日本でのサービスはワイズ・ペイメンツ・ジャパン株式会社(関東財務局長 第00040号の資金移動業者)が提供しています。銀行ではありませんが、日本の法律に基づく登録事業者です。
2. Wiseの使い方——登録から初回送金まで
使い方はシンプルです。日本の住所で使い始める場合の流れはこんな感じです。
- アカウント登録: メールアドレスで登録(無料)
- 本人確認: 運転免許証やマイナンバーカードなどをスマホで撮影して提出。国外送金にはマイナンバーの届出が必要ですが、これはWiseに限らず銀行から送る場合も同じです
- 送金設定: 金額を入力し、受取人(タイの銀行口座)を登録。この時点で手数料と着金額が確定表示されます
- 入金: 表示されたWiseの日本の口座へ銀行振込。入金が確認されると送金が実行されます
着金は速いです。Wiseの公式ページには「74%の送金が20秒以内、95%が同日中に完了」とあり、タイの主要銀行宛なら体感としても「振り込んだらすぐ届く」感覚に近い。銀行の外国送金で数日待っていた身からすると、ここは隔世の感があります。
1回あたりの送金上限は受取銀行によって違い、カシコン銀行とバンコク銀行宛は200万バーツ、SCB(サイアム・コマーシャル銀行)宛は1,499,999バーツ、その他の銀行宛は50万バーツです(2026年7月時点)。まとまった金額を送るなら、受取口座をカシコンかバンコク銀行にしておくと枠が大きく使えます。
Wiseのアカウントをまだ持っていない方は、こちらから登録できます。
※上のリンクは僕の紹介リンクです。ここから登録すると初回送金の手数料割引が受けられて(条件は登録時にWise側で表示されるものが正です)、僕にも紹介料が入ります。
3. タイ→日本へ送るには
逆方向、タイから日本へ送る場合は少し事情が変わります。タイはもともと資金の持ち出しに慎重な国で、選択肢も日本→タイほど多くありません。
現実的な手段は、タイの銀行のモバイルアプリからの海外送金です(2026年7月時点、各行公式サイトで確認)。
- K PLUS(カシコン銀行): アプリだけで海外送金が完結します。1回あたり最大49,999米ドル相当まで。手数料は送金条件で変わるのでアプリ内で確認してください
- SCB EASY(SCB): 海外送金手数料は1回199〜399バーツ。受取側で差し引かれない全額着金型の訴求が特徴です
- バンコク銀行(Bualuang iBanking): 日本円建て送金は特別料率で1回2,400バーツ。上限は1日200万バーツ
銀行の窓口から送ることもできますが、外国人の場合はパスポートに加えて、ワークパーミットや収入を示す書類の提示を求められることがあります。高額送金(目安として5万米ドル超)では送金目的の申告書類も必要になる。必要書類は銀行と金額によって変わるので、窓口に行く前に確認しておくのが確実です。
このほか、タイにはDeeMoneyのようなタイ中央銀行認可の送金サービスもあります。手数料は定額制で銀行より安いケースがありますが、上限や対応国に制約があるので、使うなら条件を確認してから。
「Wiseでタイから日本へ送れないの?」という疑問が出てくると思いますが、それが次の話です。タイ住所のWiseアカウントには2026年、海外送金機能が新しく加わりました。ただし同時に制限も付きます。
4. 2026年のWiseタイ規制変更まとめ
ここがこの記事の時事的な核です。Wiseはタイで規制体制の変更を進めていて、タイ住所で登録した個人アカウントの扱いが2026年に大きく変わります(出典はWise公式ヘルプ、2026年7月10日確認)。
スケジュールは登録時期で分かれます。
- 2026年1月21日より前に登録した既存顧客: 3月から8月にかけて新機能が段階的に展開され、8月3日から新体制の制限が本格適用
- 2026年1月21日以降に登録した顧客: 6月までに順次適用済み
新体制でできるようになったことと、制限されることを並べます。
- できるようになる: タイバーツから外貨への海外送金(従来タイ住所アカウントは受け取り中心でした)、PromptPayでの受け取り
- 海外送金の上限: 1日80万バーツ
- 通貨の変換: タイバーツ以外の通貨同士(例: 円→ドル)は、いったんバーツを経由する二段変換になり、その分手数料がかさむ
- タイ国内のATMでの引き出し: 不可(国外のATMは引き続き可)
- Wiseカード: 2026年9月までに新カードへの交換が必要
- PromptPayでの受け取り: 1回1万バーツまで
- マルチカレンシー口座からの送金: 1日3万バーツまで(利用実績で増枠あり)
大事なのはここです。この変更の対象は「タイの住所で登録した個人アカウント」だけ。日本の住所で登録したアカウントで日本からタイへ送る使い方は、これまでどおり変わりません。日本在住の方や、日本住所のままの駐在員の方は、この規制変更で慌てる必要はないです。
一方、タイ住所でWiseを使っている方(現地採用・ロングステイの方に多いはず)は、上の制限一覧を踏まえた使い方になります。1日80万バーツの送金枠は、生活資金の送金にはまず困らない水準ですが、不動産の売却代金のような大きな資金移動には足りないこともある。その場合はタイの銀行の海外送金(前の章)と使い分けることになります。
5. 送金と税金の注意
送金の話には、必ず税金の話がセットでついてきます。よくある誤解から整理します。
まず、海外送金そのものに税金はかかりません。課税されるかどうかは、送るお金の「性質」で決まります。自分のタイの給料や貯金を自分の日本口座へ動かすだけなら、送金自体で税金は発生しない。一方、家族の口座へまとまった額を送れば贈与の話になり得るし、年金や報酬のような「所得」にあたるお金は、送金するかどうかに関係なく所得として課税対象になり得ます。送金は器で、中身の性質が問われる、というイメージです。
次に、100万円を超える国外送金・受け取りは、金融機関から税務署へ「国外送金等調書」が提出されます。これは法律で決まった仕組みで、Wiseでもゆうちょでもメガバンクでも同じです。「じゃあ100万円以下に小分けすれば見えないのか」というと、そうでもありません。不自然な分割送金は金融機関のチェック対象になり得ますし、そもそも日本とタイの間では金融口座情報の自動交換(CRS)が動いていて、口座残高レベルの情報は送金額と関係なく共有され得ます。「見えないだろう」を前提にした設計はやめておきましょう。まっとうに送る分には、調書が出ても何も困りません。
海外資産と日本の税務の関係は、相続の場面でも重要になります。詳しくはこちらにまとめました。
→ 海外在住でも日本の相続税から逃れられない「10年ルール」【2026年版】
なお、タイの社会保険の年金一時金を日本で受け取る場合の税務は、送金経路(Wiseか銀行か)とは別の論点です。年金の話はこちらで。
→ タイの老齢年金 日本人も55歳からもらえます【完全解説】
6. ケース別の正解——あなたはどのパターン?
ここまでの話を、立場別に整理します。
現役駐在員(住民票は抜いたが、日本住所のアカウントを維持)
いちばん多いパターン。日本の銀行口座と日本住所のWiseアカウントを維持したまま赴任していれば、日本→タイの生活費送金は従来どおりWiseで送るのが基本形です。8月の規制変更の影響も受けません。タイ側の受取口座は、送金上限の大きいカシコンかバンコク銀行にしておくと融通が利きます。
本帰国する人
帰国前後は「タイの口座を残すか閉じるか」「残高をどう日本へ戻すか」を決める場面です。まとまった額ならタイの銀行アプリからの海外送金、閉じてしまうなら残高を日本口座へ送ってから解約、という段取りになります。タイ口座を維持したまま帰国する選択肢と注意点は、こちらの記事に詳しくまとめています。
→ タイの銀行口座を維持したまま本帰国する方法【2026年版】
→ タイから日本へ本帰国する前にやることリスト【お金編・2026年版】
タイ住所で暮らす人(現地採用・ロングステイ)
タイ住所のWiseアカウントは、8月3日以降の新体制で「タイから海外への送金」が正式にできるようになった代わりに、上限や機能の制限が付きます。日常の送金には十分使えますが、制限一覧(4章)は一度目を通しておいてください。大口の資金移動はタイの銀行送金と使い分け、Wiseカードを持っている方は9月までの交換を忘れずに。
どのパターンでも、まだWiseのアカウントを持っていないなら、日本住所のうちに(または日本の家族がいるうちに)作っておくと選択肢が広がります。登録はこちらから。
※上のリンクは僕の紹介リンクです。ここから登録すると初回送金の手数料割引が受けられて(条件は登録時にWise側で表示されるものが正です)、僕にも紹介料が入ります。
まとめ
2026年時点の日タイ送金を一言でまとめると、「個人の送金はWiseが基本。ただしタイ住所アカウントは8月3日からの新ルールを踏まえて」です。
- 銀行の外国送金は、送金手数料+関係銀行手数料+受取手数料+為替上乗せで、実質コストが見えにくい
- Wiseはミッドマーケットレート+手数料明示。10万円の送金で手数料1,333円(執筆時のシミュレーション)
- タイ→日本は、タイの銀行アプリ(K PLUS・SCB EASY・Bualuang iBanking)からの海外送金が現実的
- Wiseのタイ規制変更は「タイ住所の個人アカウント」だけが対象。日本住所のアカウントは従来どおり
- 100万円超の送金は税務署に調書が行く。送金自体は課税ではないが、「見えない前提」の設計はしない
タイ在住のお金の話の全体像は、こちらの記事から辿れます。
→ タイ在住日本人のお金の教科書【2026年版】赴任から本帰国までの全体マップ
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※この記事は2026年7月時点の情報です。手数料・送金上限・規制の内容は変わることがあります。実際の送金の際は、各サービスの公式サイトで最新の条件を確認してください。


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