タイ退職時にもらえるお金一覧【2026年版】解雇補償金・退職金・PVD・社会保険

タイ退職時にもらえるお金一覧【2026年版】解雇補償金・退職金・PVD・社会保険

タイの会社を辞めるとき——定年退職でも、会社都合でも、自分から辞める場合でも——「何がもらえるのか」を会社任せにしていませんか。

僕はタイに来て25年になりますが、周りの日本人の退職を見ていて、意外なほど知られていないと感じることがあります。それは、タイでは定年退職も法律上は「解雇」として扱われ、勤続年数に応じた補償金の支払いが会社に義務付けられていること。「定年だからもらえるのは会社の退職金だけ」と思い込んだまま帰国してしまうと、受け取れたはずのお金を取りこぼすことになります。

この記事では、タイ退職時にもらえるお金を5つに整理して、退職理由によって何が変わるか、いつまでに支払われるか、税金はどうなるかまでを一覧にします。

1. 早見表——退職理由で「もらえるお金」が変わる

まず全体像です。もらえるかどうかは「なぜ辞めるか」で変わります。

お金の種類 定年退職 会社都合の解雇 自己都合退職
法定解雇補償金 ○ もらえる ○ もらえる × 対象外
未消化の年休の買い取り △(繰越分のみ)
会社規定の退職金 就業規則・退職金規程次第
プロビデントファンド(PVD) 加入していれば理由を問わず(受取か据置かの選択が必要)
社会保険の老齢給付 理由を問わず、55歳から請求可能

一番大きな分かれ目は、1行目の法定解雇補償金です。順番に見ていきます。

2. 法定解雇補償金——定年退職でも「解雇扱い」でもらえる

タイの労働者保護法は、会社が従業員を解雇するとき、勤続年数に応じた補償金(いわゆるセベランスペイ)の支払いを義務付けています。日数は最終賃金ベースで、次の6段階です。

勤続年数 補償金の額
120日以上〜1年未満 賃金30日分
1年以上〜3年未満 賃金90日分
3年以上〜6年未満 賃金180日分
6年以上〜10年未満 賃金240日分
10年以上〜20年未満 賃金300日分
20年以上 賃金400日分

「20年以上は400日分」の区分は2019年の法改正で加わったもので、それ以前の「最大300日分」という古い情報がまだネット上に残っています。月給10万バーツ・勤続12年なら300日分=ざっくり100万バーツ。決して小さな金額ではありません。

そして冒頭に書いたとおり、ここが今日いちばんお伝えしたい点です。

定年退職は、タイの法律上「会社による雇用の終了=解雇」とみなされ、この補償金の支払い対象になります。就業規則で定年が決まっている場合はもちろん、就業規則に定年の定めがない会社でも、満60歳に達した従業員が会社に退職の意思を通知すれば、30日後に退職が成立して補償金の対象になる、という規定があります。「定年なので円満退職。だから補償金はなし」という理解は、タイでは間違いです。

一方で、対象にならないケースも明確です。

  • 自己都合退職(自分から辞める場合)は対象外。転職や早期の本帰国で自分から退職届を出す場合、法定補償金は出ません(会社が早期退職プログラムなどで独自の上乗せを用意している場合は、その合意内容次第です)
  • 懲戒解雇は対象外。会社への背任・故意の損害・書面警告後の重大な規則違反など、法律が定める事由に該当する解雇では補償金は支払われません

自分のケースがどうなるか微妙なとき(希望退職に応じる場合など、自己都合か会社都合かの線引きが曖昧なとき)は、退職合意書にサインする前に、補償金の扱いがどう書かれているかを必ず確認してください。

3. 未消化の年休と最終給与——支払期限も決まっている

細かいですが、取りこぼしやすいのがこの2つです。

未消化の年次有給休暇は、懲戒事由のない解雇(定年退職を含む)の場合、その年の分と前年からの繰越分の両方を賃金として買い取ってもらえる、と整理されています。自己都合退職の場合は繰越分のみが買い取り対象で、当年分は対象外という整理が一般的です。ただしこのあたりは会社の就業規則の書き方によっても運用が変わるので、退職前に年休の残日数と買い取りの扱いを総務に確認しておくのが確実です。

最終給与と補償金の支払期限については、解雇の場合、未払い賃金や補償金を解雇日から3日以内に支払うものとされています。「退職したのに1ヶ月以上振り込まれない」は本来おかしい状態なので、支払予定日を退職前に確認しておきましょう。

4. 会社規定の退職金——あるかどうかは規程次第

法定の解雇補償金とは別に、会社独自の退職金・功労金の制度を持っている会社があります。これは法律上の最低基準があるものではなく、完全に就業規則・退職金規程・雇用契約次第です。

日系企業の場合、日本本社の制度に準じた退職金規程を持っていることもあれば、「法定補償金がタイの退職金」という整理の会社もあります。退職を切り出す前に、就業規則と退職金規程を読み直しておく——これだけで交渉も心構えも変わります。

5. プロビデントファンド(PVD)——受け取るか、据え置くかの選択が必要

勤務先がPVD(Provident Fund)に加入していた場合、自分の積立分+会社拠出分+運用益を退職時に受け取れます。ただし、退職時に「一時金で受け取る」「ファンドに据え置く」「RMFに移管する」といった選択が必要で、どれを選ぶかで税金が大きく変わります(55歳未満で受け取ると課税、55歳+加入5年以上なら非課税、など)。

ここは1本の記事になる分量なので、詳しくは タイ退職時のプロビデントファンドの記事 にまとめています。退職日が決まったら、真っ先に検討してほしい項目です。

6. 社会保険の老齢給付——55歳から請求できる「忘れられがちなお金」

タイで働いて社会保険料を払っていた人は、55歳になり被保険者でなくなった後に、老齢給付を請求できます。納付期間が180ヶ月(15年)未満なら一時金、180ヶ月以上なら終身年金です。一時金の場合、納付12ヶ月以上であれば本人拠出分に会社拠出分と運用益を加えた額が戻ってきます。

これは退職時に会社から自動的にもらえるお金ではなく、自分で(または代理人が)社会保険事務所に請求しないと受け取れません。しかも帰国して何年も経ってから請求できるため、「そんな制度があったのか」と定年後に気づく方が本当に多い。僕のブログで一番読まれているテーマです。

退職時にやっておくことは2つだけです。

  • 社会保険番号を控えておく(複数の会社で働いた場合は会社ごとに。詳しくは 駐在中のチェックリストの記事 へ)
  • 会社が社会保険の資格喪失手続き(退職の翌月15日までに届け出る義務があります)をしてくれることを、総務にひとこと確認しておく

受給の条件・金額の目安・申請の方法は タイの老齢年金の記事 に全部まとめてあります。55歳が近い方はぜひ。

7. 税金の話——非課税枠が使えるのは「会社都合」だけ

最後に税金です。ここにも意外な落とし穴があります。

会社都合の解雇でもらう法定補償金には、賃金400日分かつ60万バーツまで非課税という枠があります(2024年の省令改正で、それまでの「300日分かつ30万バーツ」から拡大され、2023年1月1日以降の所得に遡って適用されています)。

ところが、この非課税枠は定年退職や契約満了でもらう補償金には適用されないとされています。「同じ補償金なのに、定年だと課税?」と驚くのですが、そういう建付けです。

ただし定年退職の場合も、退職を理由に一度にもらうお金(補償金・退職金)には、給与と合算せずに別枠で計算する分離課税の仕組みがあります。「7,000バーツ×勤続年数」を引き、さらに残額の50%を引いてから税率をかける計算で、勤続が長いほど税負担が大幅に軽くなります。PVDの一時金と同じ枠組みです。実際にいくらになるかはケースごとに違うので、申告前に会社の経理か税務の専門家に確認してください。タイの確定申告の全体像は タイの個人所得税の記事 にあります。

それから書類を1枚だけ。源泉徴収票(50タウィ)は必ず受け取って保管してください。退職者には退職日から1ヶ月以内に発行されるものとされていて、確定申告にも、後から「いくら源泉されたか」を確認するのにも必須です。

8. まとめ——退職前チェックリスト

最後に、退職が決まったら確認することを順番に並べます。

  • 就業規則を読む(定年の定め・退職金規程・年休の繰越ルール)
  • 自分の退職が「定年・会社都合・自己都合」のどれに当たるか整理する(補償金の有無が変わります)
  • 法定解雇補償金の見積り(最終賃金×勤続年数の該当日数)を自分でも計算しておく
  • 年休の残日数と買い取りの扱いを総務に確認する
  • PVDの受取・据置・移管を決める(PVDの記事
  • 社会保険番号を控え、資格喪失手続きの完了を確認する(55歳になったら老齢給付の請求を忘れずに)
  • 源泉徴収票(50タウィ)を受け取って保管する

退職して日本へ本帰国する方は、お金まわりの手続き全体を 本帰国前のやることリスト【お金編】 にまとめているので、あわせてどうぞ。タイでのお金の全体像は タイ在住日本人のお金の教科書 からたどれます。

※この記事は2026年7月時点の情報です。労働法・税制は改正があり、個々の退職条件によっても扱いが変わります。実際の手続きの前に、会社の総務・就業規則、必要に応じて労働法・税務の専門家に確認してください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました