この記事では、タイで働いた人が55歳以降にもらえるタイの老齢年金について解説しています。条件を満たしていれば、日本人でももらえますし、現在はタイに住んでいなくてももらえます。
金額はそれほど多くはありませんが、社会保険の掛け金を払っていた方でしたら、申請するだけでもらえます。条件を満たせるようになったら、申請してみてはいかがでしょうか。
目次
受給の条件
受給条件は以下の通りです。3つ全てを満たしたとき、申請が可能になります。
- 以前はタイの社会保険に加入していた(取締役は加入していない場合もあります)が、
- 現在はタイの社会保険に加入していない
- 55歳以上である
55歳以前で退職した場合は、55歳になったときに申請します。
55歳以上で退職、またはタイの社会保険から脱退した場合は、その時点で申請します。
かつてタイで働いていて、タイの社会保険に加入していた方は、たとえいまはタイにいなくても、55歳になれば老齢年金を受け取れます。
規則上は、3つの条件を満たしてから1年以内に(つまり満56歳までに)手続きが必要となっていますが、実際には過ぎていても問題ありません。いままで手続きした方は全員もらえています。
支給される年金の種類
タイの社会保険に加入していた期間によって異なります。
- 加入期間が180ヶ月(15年)未満 → 老齢一時金が支給される(1回限り)
- 加入期間が180ヶ月(15年)以上 → 老齢年金が支給される(亡くなるまで毎月)
自分でどちらかを選ぶことはできません。加入期間によって自動的に決まります。
また、任意加入の期間は、この加入期間や、年金額を計算する際の加入期間には入りません。
タイで老齢年金の制度が始まったのが1999年ですので、2024年の時点では、加入期間は最長でも25年(300ヶ月)となります。
ちなみにタイ語では
- 老齢一時金:เงินบำเหน็จ(グン・バムネット)
- 老齢年金:เงินบำนาญรายเดือน(グン・バムナーン・ラーイドゥアン)
といいます。
それぞれの支給金額について詳しく解説します。
老齢一時金の金額
加入期間が180ヶ月(15年)未満の場合は一時金が支給されますが、その金額は加入期間が12ヶ月未満なのか、もしくは12ヶ月以上なのかによって異なります。
タイの社会保険料は、月給 15,000バーツ以上の場合は会社負担が750バーツ、自己負担が750バーツで、このうち老齢年金の掛金はそれぞれ450バーツです。
以下の例では、単純に現在の掛金450バーツを用いて計算していますが、以前は掛金が異なったり、一時的に軽減された時期もありますので、金額が多少変わることがあります。おおよその目安として参考にしてください。
加入期間が12ヶ月未満の場合
本人が支払ったタイの老齢年金の掛金(月額450バーツ)の総額が一括支給されます。
加入期間1ヶ月なら450バーツ、10ヶ月なら4,500バーツ、最大は11ヶ月の4,950バーツです。
加入期間が12ヶ月以上の場合
本人+会社が支払ったタイの老齢年金の掛金(月額900バーツ)の総額+利子が一括支給されます。
加入期間が12ヶ月なら10,800バーツ、60ヶ月(5年)なら54,000バーツ、最大は149ヶ月(14年11ヶ月)の134,000バーツです。これに利子が加算されます。
利子の利率は毎年発表されており、例えば2020年は 4.52%、2021年は 2.75% です。
老齢年金の月額
加入期間が180ヶ月(15年)以上の場合は年金が毎月支給されます。
タイで老齢年金の制度が始まったのが1998年末ですので、2021年末時点での加入期間は、最長でも23年となります。
年金の金額は、180ヶ月(15年)分に対しては月額 3,000バーツ。それ以上の期間については、1年につき月額225バーツが加算されます(給与が15,000バーツ以上の場合)。9ヶ月以上は1年に切り上げて計算します。
- 加入期間 180ヶ月(=15年):3,000バーツ/月
- 加入期間 240ヶ月(=20年):3,000 + 225 x 5 = 4,125バーツ/月
- 加入期間 300ヶ月(=25年):3,000 + 225 x 10 = 5,225バーツ/月
- 加入期間 360ヶ月(=30年):3,000 + 225 x 15 = 6,375バーツ/月
日本人の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳(2019年のデータ)ですので、仮に加入期間 180ヶ月(=15年)の人が、55歳から80歳までの25年間受給する場合の受給総額は、
- 本人拠出総額:月750バーツ x 180ヶ月(15年)=135,000バーツ
- 受給総額:月3,000バーツ x 300ヶ月(25年)= 900,000バーツ
社会保険の拠出額13.5万バーツに対して、支給額はその6.6倍の90万バーツ!となり、かなりお得な制度になっていることがわかります。
この制度が持続可能かどうかはわかりませんが…。
老齢年金の受給が始まったら、存命確認が必要になります。存命確認は、毎年10月に、タイ在住の場合はタイ社会保険事務所で、日本在住の場合は日本大使館/領事館で行います。
老齢年金の受給開始後に再就職した場合
まれなケースですが、老齢年金の受給開始後に再就職した場合についてお問い合わせをいただきましたので、追記しておきます。
タイ社会保障法 第77の3条では、
『老齢年金の給付を受けている者が、被保険者に戻った場合、第38条または第41条により被保険者の地位を喪失するまで、老齢年金の給付を中止する。』
と定めています。
この法律に従い、再就職した場合は社会保険の被保険者に戻り、年金の給付は一時中止され、退職すると再開される、ということになります。
また、「老齢年金を受け取っていると、再就職したときに社会保険に再加入できるか?」という質問をいただきましたが、この答えは、「再就職でも社会保険に加入できる」となります。
遺族年金
DACO誌の記事によると、
『1998年から15年以上社会保険を納付し、毎月年金を受け取っていた人が亡くなった場合、月額還付金額の10倍が子供に(子供がない場合、配偶者に。配偶者がいない場合、父母に。相続人に。兄弟に……の優先順で)支払われます』
だそうです。
情報リンク
- kapook.com の解説ページ:簡潔にまとまっていてわかりやすい
- 社会保険事務所の解説ページ:詳細な情報が載っていますがわかりにくい
- タイ社会保険法 その1 その2(タイ語 พระราชบัญญัติประกนั สงคม พ.ศ. ๒๕๓๓) 老齢年金はp25 第7章 第76条~ (1, 2とも同じ内容。よく消えるので念のため)
- タイ社会保障法(日本語 JETRO訳) 老齢年金はp22 第7章 第76条 だけどほとんど省略されていて訳文は2行のみ
申請のお手伝い
「以前タイで働いていたので、年金をもらえるかどうか確認したい」「申請を手伝ってほしい」という方がいらっしゃいましたら、nisizawa at gmail dot com までメールでご相談をお願いします。できる範囲でお手伝いさせていただきます。
かなり沢山のお問い合わせをいただいており、ありがとうございます。この場を借りてお礼を申し上げます。
コメント
自力で調べても結局わからず、ご存じでしたらお伺いしたいのですが...
あと数年で定年となるのですが、社会保険の加入期間が180か月までに数か月足りません。
このままだと老齢年金ではなく老齢一時金となりますが、退職後も社会保険は任意継続できる事を知りました。(ม.39?)
この場合、任意継続でも加入期間の延長とみなされ、老齢年金の対象になり得るのでしょうか。
確認しましたところ、任意継続の期間は、年金の180か月には数えないそうです。
これは、勤続中は会社と従業員の両者が掛け金を支払っているのに対し、任意継続では本人だけが支払っているため、ということでした。
迅速なご回答まことにありがとうございます。非常に参考になります。
やはりそうなんですね。
支払い金額が変わるのに、同じ条件で年金がもらえるのは調子が良すぎるよなぁ、とは思っておりましたが、すっきりいたしました。
Twitterもフォローさせていただいております。
いつも非常に有益な情報をありがとうございます。
1993年から社会保険は入っていたのですが、8年駐在後日本に1年7カ月帰国、再赴任で7年駐在した後に、会社を辞め、ローカル会社に転職、その後も2社程転職し今も働いておりますが、ローカル会社に勤めたことから現在までの記録はSSOで確認できたのですが、それ以前の駐在員時代の記録がありませんでした。もしかしたらローカル会社に勤めた時に、新たに社会保険番号を取得してしまったのかもしれません。
以前の社会保険番号は分かりませんが、調べる事は可能なのでしょうか?
また、もし記録が見つかった場合、合算することは可能なのでしょうか?
ご存じであれば教えて頂けると助かります。
黒須さん
私も同じような経験がありまして、転職したときに、以前の職場での加入期間や拠出金が合算されていませんでした。
そのときは、社会保険事務局に私の記録自体はあるものの、名寄せができていない状態でした。調べてもらい、無事に名寄せをすることができました。
おそらく、タイ人の場合はID番号が変わらないのでこういった問題は起きにくいのに対して、日本人はパスポート番号が変わるためにデータが別々になってしまうのかもしれません。
当時の勤務期間、パスポート、社会保険番号といったできる限りの資料をまとめて、社会保険事務局で調べてもらうことをおすすめします。データ自体は残っていて、名寄せができるかもしれません。
ただ、老齢年金の制度開始が1999年ですので、黒須さんの勤務期間が1993~2001年だとしますと、老齢年金の加入期間は約3年となります。
有り難うございます。
今まで記録がある分は154回支払い分なので、過去3年分が見つかれば180回を超えるので、年金として一生もらえる事になる?という事ですか?
まぁそうなんですが、思っていたよりも加入期間が短かったりすることもよくあります。
あと、過去の加入期間が加算されないというケースもありました。
まずは社会保険事務局で確認することをおすすめします。
いつも有益なブログをありがとうございます。
タイで駐在後、日本へ帰国。今も働いております。
タイで死ぬまで年金がもらえると聞いたのですが、ブログを読んでいると働いている場合はもらえないという事でしょうか。日本に帰国した場合タイ側では私が日本で働いている事は分かるのでしょうか?
受給の条件は下記の3つですので、日本で働いているかどうかは関係ありません。
1. 以前はタイの社会保険に加入していた(取締役は加入していない場合もあります)が、
2. 現在はタイの社会保険に加入していない
3. 55歳以上である
現在日本で働いていてももらえます。
NISHIZAWA様
有益な記事を読ませて頂き、感謝申し上げます。
「タイの老齢年金 日本人も55歳からもらえます」の記事は非常に役に立ちました。
バンチャックの陸運局にて、タイの自動車免許証の更新を2024年1月15日に行って参りましたので、参考までに状況を連絡申し上げます。
運転免許有効期限の6ヶ月前から更新手続きが可能です。※昔は3ヵ月前だった様な気がいたします。
誕生日が5月31日で、 2024年1月15日に更新した場合、2029年5月31日まで有効の免許証が発行されます。
必用書類は以下でした。
①パスポート原本
②パスポートコピー
(顔写真ページ,最新のVISAページ,最終タイ入国スタンプページ※各1部)
※VISA満了日の残り90日以上あること
③日本大使館発行の在留届出済証明書(英文)原本
④運転免許証用 健康診断書 原本(1部)
⑤タイ王国運転免許証 原本
⑥運転免許証発給代金 505バーツ
※オンライン講習の画面のスクリーンショットが必要
バンチャックの陸運局にて2024年1月15日に申請の際は、
08:00am頃に入場して、免許を受け取れたのは09:00am頃でした。
試験は簡便になっておりました。
1. 日本の棒が重なる様に動かす。
2. アクセルペダルを踏んで赤ランプが点いたらブレーキを踏む。
3. 赤・黄・青のランプが9回点くので、点いたランプの色のボタンを押す。
在留届出済証明書(英文)は、オンラインで申請して、受取時のみ日本領事館へ行けば良くなりました。
1月10日13:00pm オンラインで申請
1月11日09:00am 日本領事館にて在留届出済証明書(英文)受け取り可のメールが届きました。
日本領事館で発行される書類中、オンラインで申請可能な書類が随分 増えております。
今後のNISHIZAWA様の ご活躍を期待申し上げます。