海外赴任中、日本の銀行口座・証券口座はどうする?【2026年版】

海外赴任中、日本の銀行口座・証券口座はどうする?【2026年版】

海外赴任が決まったとき、意外と後回しになりがちなのが「日本の銀行口座と証券口座をどうするか」です。パスポートやビザ、引越しの段取りに追われて、口座のことは「まあ、そのままでいいか」で出国してしまう。実はこれ、あとで一番困るパターンです。

僕はタイに住んで25年になります。本業のかたわらタイの年金申請のサポートをしていて、その中で「日本の口座はどうしていましたか」という話題が本当によく出ます。出国前に何もしなかった方、届け出て正しく維持していた方、いろいろ見てきました。

先に全体図を示します。銀行口座は「届け出れば維持できる」ものが多い。証券口座は「非居住者は原則NG」だが、2024〜2025年に救済措置が大きく広がった。そして一番やってはいけないのが、何も届け出ずに「日本にいることにして」使い続けることです。発覚すれば規約違反で口座凍結のリスクがあります。

この記事では、主要な銀行・証券会社の非居住者ポリシーを2026年7月時点の公式情報で整理して、出国前に何をすべきかを順番に見ていきます。

1. 銀行口座——非居住者ポリシーは銀行でこんなに違う

まず大前提として、日本の銀行口座は「日本の居住者」であることを前提に作られています。海外赴任で非居住者になるときにどう扱われるかは、銀行によって驚くほど差があります。大きく3タイプに分かれます(2026年7月時点、各行公式サイトで確認)。

タイプ1: 海外赴任者向けサービスがある銀行

  • 三菱UFJ銀行「グローバルダイレクト」: 月額300円で、海外からのネットバンキング・外国送金(月500万円相当まで)が使えます。注意点は出国前しか申し込めないこと。公式に「出国済みのお客さまは新規にお申し込みいただくことはできません」と明記されていて、申込期限も出国予定日の10〜15営業日前。赴任が決まったら早めに動く必要があります
  • 三井住友銀行「SMBCダイレクト・グローバルサービス」: 月額220円(税込上限)。海外赴任者とその帯同家族が対象で、残高照会や海外送金が使えます。こちらも出国前の申請が前提で、出国3ヶ月以上前の申請が推奨されています

タイプ2: 届け出れば条件付きで維持できる銀行

  • ソニー銀行: 「国外への住所変更届」と日本国内の連絡先の登録で、海外からも継続利用できます。外貨送金は非居住者になると使えなくなるなど一部制限はありますが、ネット銀行の中では海外赴任に寛容な部類です。2024年3月からは、国外住所の顧客の国内振込手数料が110円に引き下げられています
  • SMBC信託銀行プレスティア: 非居住者口座に変更することで、海外の住所のまま口座を維持できます。海外赴任者の定番として名前が挙がる銀行です。ただし口座維持手数料の条件(月間平均総取引残高50万円相当以上などで無料、未達なら月2,200円)があるので、残高を薄くして放置する使い方には向きません
  • ゆうちょ銀行: 基本方針は「可能な限り解約を」ですが、給与振込などで使う目的があれば、非居住者の届けを出したうえで保有できます。ただし手続きは第三者への委任(利用代理人の設定)が必要になるなど、使い勝手はかなり落ちます
  • みずほ銀行: 海外赴任時は店舗備え付けの申告書類・CRS関連書類の提出が必要で、非居住者になるとキャッシュカードやみずほダイレクトなど一部サービスが使えなくなります。維持の可否や条件は個別性が強いので、取引店への確認が前提です

タイプ3: 非居住者は原則解約の銀行

  • 楽天銀行: 規定に「非居住者になる場合は、事前に当行へ通知のうえ、口座を解約しなければならない」と明記されています。海外赴任で非居住者になるなら解約が前提です
  • 住信SBIネット銀行: 海外に1年以上滞在して非居住者となる場合は、口座解約の手続きが必要とされています(外貨預金やローン契約がある場合などはカスタマーセンターへ相談)

給与振込や各種引き落としに使っているメインバンクがタイプ3だった場合は、出国前にタイプ1・2の銀行に軸足を移しておく必要があります。ここは赴任準備の中でも時間がかかるところなので、辞令が出たら早めに確認してください。

「黙って維持」はなぜまずいのか

実際には、住所を実家に移したまま何も届け出ずに使い続けている人が少なくないのも事実です。ただ、銀行には犯罪収益移転防止法に基づいて顧客の居住状況を確認する義務があり、非居住者であることを隠したままの利用は規約違反として口座凍結の対象になり得ます。凍結されると、引き出しも送金もできなくなり、海外からの復旧手続きは非常に大変です。

各行がわざわざ海外赴任者向けの枠組みを用意しているのだから、正面から届け出て使うのが結局いちばん安全で、手間も少ない。これがこの記事の一貫したスタンスです。

2. 証券口座——「非居住者は原則NG」の建前と、2024〜2025年の緩和

証券口座は銀行よりルールが厳格です。非居住者は日本の証券会社で新規の取引ができないのが原則で、出国時には「出国手続きをして維持する」か「解約する」かの二択になります。

ただし、ここ数年で状況はかなり良くなりました(2026年7月時点、各社公式サイトで確認)。

  • SBI証券: 出国の前営業日までに届出書類と常任代理人(2親等以内の親族、または弁護士・税理士等)の設定をすれば、口座を継続できます。2024年10月と2025年6月の2段階で継続保有できる商品が広がり、以前は出国時に売却が必要だった外国株式・投資信託・国内債券なども、手続きをすれば持ったまま赴任できるようになりました。出国後にできるのは原則、売却と出金のみです
  • 楽天証券: 1年以上(米国赴任は183日以上)の出国で「出国手続き」が必要。常任代理人を立てれば継続できます。自分で親族等を立てるほか、有料の紹介サービスもあります。出国予定日の前後に約1ヶ月、売却ができない手続き期間が発生する点は覚えておいてください
  • マネックス証券: 原則は解約(残高を売却・出金してから解約)。売却できない事情がある場合は「休眠口座」として維持できますが、出金以外の取引はすべて制限されます
  • 野村證券・大和証券(対面系): 出国時に所定の手続きが必要です。野村證券は出国で特定口座がいったん廃止されますが、出国前と帰国時の手続きで、帰国後に資産を特定口座へ組み入れ直すことができます

ポイントは、「どの証券会社に口座を持っているか」で赴任時の選択肢がまったく変わることです。同じネット証券でも、SBI・楽天は「維持できる」、マネックスは「原則解約」。赴任の可能性がある方は、口座を開く段階からこの差を意識しておくと後で楽です。

NISA口座については、「継続適用届出書」を出すことで最長5年間維持できる特例があります。ただし継続期間中は新規買付ができない、対応していない金融機関では出国=口座廃止になる、など重要な条件がいくつもあります。NISAとiDeCoの話は論点が多いので、別の記事で詳しく整理します。

海外赴任とNISA・iDeCo【2026年版】出国で口座はどうなる?

3. クレジットカード・携帯電話番号の維持

口座とセットで考えたいのが、クレジットカードと日本の携帯番号です。

クレジットカード

日本のクレジットカードの多くは、会員規約上は日本国内の居住者を前提にしています。実務では、海外赴任時に住所変更(海外住所または国内の連絡先)を届け出たうえで使い続けている人が多い、というのが実情です。カードごとに扱いが違うので、メインカードの会社には赴任前に確認しておきましょう。

実務上いちばん困るのが本人認証(3Dセキュア)のSMSです。ネット決済の認証コードが日本の電話番号のSMSに飛ぶ設定になっていると、日本のSIMを解約した瞬間に決済が通らなくなります。対策は2つ。日本の番号をローミングで生かしておくか、認証方法をSMS以外(カード会社の公式アプリやメールでのワンタイムパスワード)に切り替えておくことです。三井住友カード・アメックス・JCB・イオンカードなどはメールやアプリでの認証に対応しています。

日本の携帯番号

日本の携帯番号は、銀行・証券・カードすべての本人確認のハブなので、解約せずに安く維持するのが定石です(2026年7月時点)。

  • povo 2.0: 基本料0円ですが、180日間有料トッピングの購入がないと利用停止・契約解除のリスクがあります。半年に一度、数百円のトッピングを買う運用で、年間1,000円前後で番号を維持できます。最新の条件とトッピング価格はpovo公式サイトで確認してください
  • 楽天モバイル: 一時停止の仕組みはなく月額を払い続ける形ですが、海外ローミングが毎月2GBまで無料で使えるので、「維持費で海外でも使える回線」と考えると悪くない選択肢です

4. 帰国したら——再開の手続き

赴任が終わって帰国したら、出国時にやったことを逆回しにします。銀行の海外赴任者向けサービスの解除、証券会社への帰国届、NISAの帰国届出書、住所変更。どれも「帰国後すみやかに」が原則です。

帰国前後の手続きはお金まわりだけでも項目が多いので、チェックリスト形式でまとめたこちらの記事をどうぞ。タイからの本帰国を想定した記事ですが、手続きの骨格はどの国からの帰国でも同じです。

タイから日本へ本帰国する前にやることリスト【お金編・2026年版】

5. Wise多通貨口座という選択肢

最後にもう一つ。日本の銀行口座の「海外から使いにくい」部分を補う道具として、Wiseの多通貨口座(マルチカレンシー口座)があります。円・バーツ・ドルなど複数の通貨を一つのアカウントで持てて、日本と赴任先の間の送金も手数料が安い。日本の口座を最小限の維持にして、日常の国際的なお金の移動はWiseで、という組み合わせは、赴任中の定番の型になりつつあります。

日タイ間の送金手段の比較とWiseの使い方は、こちらの記事に詳しくまとめました。

日本⇔タイの海外送金はWiseが基本【2026年版】手数料比較と8月の規制変更まで

まとめ——出国前チェックリスト

最後に、出国前にやることを時系列で並べます。

  • 辞令が出たら: メインバンクと証券会社の「海外赴任時の扱い」を公式サイトで確認
  • 出国3ヶ月前まで: 銀行の海外赴任者向けサービスを申請(MUFG・SMBCは出国前しか申し込めない)。証券会社の出国手続きの要否と常任代理人の当てを確認
  • 出国1ヶ月前まで: 証券の出国手続き(楽天証券は約1ヶ月の売却不可期間に注意)。NISAの継続適用届出書。クレカの住所変更と3Dセキュアの認証方法変更
  • 出国直前: 携帯をpovo等の維持プランに切り替え。ネットバンキングのログイン・ワンタイムパスワードが海外から使えるか最終確認

口座まわりは「出国してからでは手遅れ」の手続きがいくつもあります。特にMUFGのグローバルダイレクトとNISAの継続適用届出書は出国前限定。この2つだけでも、赴任が決まったその週に確認しておくことをおすすめします。

タイ在住のお金の話の全体像は、こちらの記事から辿れます。

タイ在住日本人のお金の教科書【2026年版】赴任から本帰国までの全体マップ

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※この記事は2026年7月時点の情報です。各行・各社の非居住者ポリシーや手数料は変わることがあります。実際の手続きの際は、必ず各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。

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