カンボジア不動産投資による脱税手法を暴露~『富裕層のバレない脱税』感想

『富裕層のバレない脱税』という本を読んだ。

Amazon.co.jp: 富裕層のバレない脱税―「タックスヘイブン」から「脱税支援業者」まで (NHK出版新書 526) : 佐藤 弘幸: 本

この本では、元国税局資料調査課の著者が、「富裕層のあらゆる脱税の手口を白日のもとにさらす」として、さまざまな脱税方法を暴露、解説している。

紹介している脱税の手口は、例えば次のようなもの。
・水商売や風俗における売上の除外
・宗教法人の脱税(オウム真理教が経営していたパソコンショップの話も匿名で出ている)
・富裕層による脱税
・海外の保険や投資を使った脱税
・大企業による大掛かりな節税・脱税のスキーム
小規模なものから、世界規模のものまで、よくここまで知っていると驚いてしまう。

その中にある、海外を利用した脱税手法のひとつは、カンボジアへの不動産投資を利用した脱税スキームだ。本書では「C国」と書いているが、おそらくカンボジアのことだろう。

タイ在住者として、隣国のカンボジアの話題は気になったので、この本に書かれている手法を紹介したい。もちろん違法なので、実践してはいけない。あくまで話として読んでほしい。

まず、なぜカンボジアなのか?という理由なのだが、投資先の国は、次の3つの条件を満たす必要がある。

  1. 日本と租税条約を締結していない
  2. 登記簿の取得が難しく、現地語で記載されている
  3. 不動産の値上がりが見込める。

条件1と2があるために、日本の税務当局にとって調査がしづらい=脱税がバレにくいという点がポイントだ。タイの近隣国で、日本と租税条約を締結していない国は、カンボジア、ミャンマー、ラオスの3ヶ国である(下図参照)。この3ヶ国であれば、同じ手口が実践できるだろう。

(我が国の租税条約ネットワーク 出典:財務省)

では実際にどのような手口なのか?

まず、脱税したい投資家は、カンボジアで1億5千万円の不動産を購入する。ここで、日本の当局は租税条約に基づく税務調査を委託できないこと、登記情報が漏れないことを前提に、契約書を「2億円」に偽造する。5千万円のオーバーバリューである。

その契約書を用いて、日本からカンボジアには2億円を送金する。その2億円で、1億5千万円の物件Aと、5千万円の物件Bを購入する

日本の税務署には、物件Aのみを申告、これから生じる賃貸収入も確定申告する。ただし物件Bについては申告しない。物件Bから生じる賃貸収入は、現地の銀行口座の定期預金にでも入れておけば丸儲けだ。

また将来、物件Aが3億円で売れたとしよう。本来の利益は「3億円 – 1億5千万円 = 1億5千万円」だが、2億円と虚偽の申告をしたので、「3億円 – 2億円 = 1億円」が利益となり、こちらでも脱税ができる。また、物件Bを売却したときの代金は全く申告しないで済む。

以上が、カンボジアへの不動産投資を利用した脱税スキームだ。

僕は海外に住んでいるため、この脱税方法には興味を持った。僕自身はそういった脱税手法を使えるだけの小金はないが、海外在住者には、こういった手法を利用したり、脱税に関係している人がいるのかもしれない。

Amazon.co.jp: 富裕層のバレない脱税―「タックスヘイブン」から「脱税支援業者」まで (NHK出版新書 526) : 佐藤 弘幸: 本

こういったさまざまな手法を詳細に解説している『富裕層のバレない脱税』。脱税の手法に興味がある人は、ぜひ読んでみることをおすすめする。