【2019年版】タイの個人所得税を節税する方法と手順【完全解説】

この記事は2019年度(2019年1月1日~12月31日)についての解説です。2020年度についてはこちらの記事をご覧ください。

この記事では、タイで働き、個人所得税を納めている方に向けて、タイで個人所得税を節税するための方法と、実際の手順について解説しています。

タイでは、個人ができる節税の手段がいくつもあります。

面倒くさいから、、、よくわからないから、、、と放っておくと、毎年数万バーツも税金を多く納めることになります。長年に渡り節税し、それを複利で運用した人と、何もせずに放っておいて税金を支払った人では、10年、20年と経ったとき、どれぐらい差がつくでしょうか。

いまからでも遅くありません。もしいままで節税をしていなくても、この記事を読んで、今年から節税を初めてみてはいかがでしょう?

目次

タイの個人所得から控除できる金額

タイの個人所得からは、以下の金額を控除できます。

    1. 本人控除 6万バーツ
    2. 配偶者控除 6万バーツ 配偶者が無収入であること
    3. 本人または配偶者の両方に収入がある場合は、合算して最大12万バーツまで控除
    4. 子供控除 一人あたり3万バーツ 最大3人まで
    5. 60歳以上の父母の扶養控除 本人と配偶者の父母一人あたり3万バーツ 最大4人まで
    6. 障がい者扶養控除 一人あたり6万バーツ
    7. 生命保険控除 最大10万バーツまで 満期10年以上 配偶者が無収入で、年間を通じて結婚してるなら、配偶者保険を最大1万バーツまで
    8. 両親医療保険控除 一人あたり最大1万5千バーツまで
    9. 退職積立基金(プロビデントファンド)控除 最大50万バーツまで ただし1万バーツ超の分は課税所得の15%以内
    10. 退職投資信託(RMF)控除 課税所得の15%以内 ただし 9.退職積立基金、11.年金保険控除 と合算して最大50万バーツまで
      参考 RMF詳細解説
    11. 年金保険控除 最大20万バーツまで ただし課税所得の15%以内 契約期間10年以上 受給期間は、開始が55歳以降で、終了が85歳以降であること RMFと合算して最大50万バーツまで
      参考 年金保険の詳細解説
    12. 公的貯蓄基金控除 RMFと合算して最大50万バーツまで
    13. 長期投資信託(LTF)控除 最大50万バーツまで ただし課税所得の15%以内 要保有期間7年以上
      参考 LTFの詳細解説
    14. 住宅利子控除 最大10万バーツまで
    15. 社会保険控除 実支払額(750バーツ x 12ヶ月 = 9千バーツ)
    16. 医療保険控除 最大15,000バーツまで ただし生命保険と合算して最大10万バーツまで
    17. 寄付金控除 教育・スポーツ期間への寄付は寄付額の2倍、それ以外への寄付は実支払額 ただし課税所得の10%以内

(出典:タイ歳入局)

1~6と15 は申請するだけで控除されますが、7~17 は自分で投資・購入しなければ控除されません。

例えば、控除後の課税所得が100万バーツの人が、10万バーツの生命保険を買うと、10万バーツを控除できますので、課税所得は90万バーツになります。

所得100万バーツに対する所得税は115,000バーツ、所得90万バーツに対しては95,000バーツですので、2万バーツの節約になります。そして生命保険は元金+利子が戻ってきます。節税は損にはならないので、できる限りやった方が得です。

では、どれを優先してやるべきでしょうか? それを次の項で説明します。

おすすめの節税手段

節税をするためにはお金が必要です。いま、節税のためにいくらまで使えるか?というあなたの予算によって、できることは変わってきます。

ここでは優先順位をつけて、節税の手順を解説します。あくまで一例ですが、上から順に節税をしてみてはいかがでしょう。

1. 生命保険控除 本人分10万バーツ+配偶者分1万バーツまで

まず、生命保険を契約しましょう。

これは、無リスクで貯金ができる、貯蓄型の生命保険です。通常は、毎年1回の掛金を5年ほど支払って、10年後以降の満期になると、掛金の全額+利子が返ってきます。

銀行などで相談すると、満期15~20年の保険を勧められることが多いのですが、所得控除に使えるのは、満期10年以上の保険です。ここで利率を計算してみると、買い手にとって最も得な商品は、満期10年の保険となります。これは、売り手(保険会社・銀行)にとっては最も儲からない商品(笑)ですので、こちらから言わないと提案してくれないかもしれません。担当の方にお願いして、満期10年のプランを作ってもらいましょう。

金額は、10万バーツまでのいくらでも構いません。余裕がなければ年1万バーツでもいいんです。初年度の利回りは、節税分15~25%+保険の運用利率1~2%=16~27%になりますので、銀行の定期預金で年1~2%をもらうよりも絶対にお得です

2. 長期投資信託(LTF)控除 最大50万バーツまで ただし課税所得の15%以内

まだ予算があれば、LTFを購入するのが良いでしょう。

ただし、株価次第で損するリスクがありますので、それを理解した上で購入してください。簡単に言えば、LTFは平均では年5%程度上がりますが、リーマンショックなどの大暴落時には、30%ほど下がるリスクがあります。

購入できる金額は最大50万バーツとなっていますが、ほとんどの方は50万バーツも購入できず、課税所得の15%が上限になるはずです。課税所得が100万バーツなら、最大15万バーツを控除できます。

LTFの買い方、選び方など、LTFで知っておくべきことについては、こちらの記事「【2017年版】LTFを買ってタイで所得税還付で解説しています。

LTFの初年度利回りは、節税分15~25%+LTFの運用利回り5%=20~30%と考えればよいと思います。

3. 退職投資信託(RMF)控除 退職積立基金・年金保険控除と合算して最大50万バーツまで ただし課税所得の15%以内

RMFは、LTFとほとんど同じ商品です。ただし、LTFが足掛け7年で売却できるのに対して、RMFは55歳にならないと売却できません。49歳以下の方でしたら、LTFの方が先に売却できますので、LTFを先に購入して、余裕があればRMFを購入するのが良いでしょう。

会社で退職積立基金に加入している場合は、その掛金もこの金額に含まれます。

RMFの詳細については、別記事「タイの RMF(退職投資信託)情報まとめ」をご覧ください。

RMFの初年度利回りは、LTFと同じく、節税分15~25%+RMFの運用利回り5%=20~30%と考えればよいと思います。

4. 年金保険控除 最大20万バーツ RMFと合算して最大50万バーツまで

それでもまだ資金の余裕があるなら、年金保険を購入すると良いでしょう。詳細については、こちらの記事「タイの年金保険」をご参照ください。ただし利回りは、上記の生命保険・LTF・RMFほどお得ではなく、銀行の定期預金よりもちょっと良い程度です。

年金保険+RMF+退職金積立を合計して50万バーツまで所得を控除できます。

以上の控除手段を全て行うと・・・?

例を挙げて計算してみましょう。仮に課税所得を100万バーツとすると、

  • 生命保険控除 本人分10万バーツ
  • 長期投資信託(LTF) 15万バーツ
  • 退職投資信託(RMF) 15万バーツ
  • 計40万バーツ

を購入した場合、40万バーツを控除して、課税所得は60万バーツに減ります。所得100万バーツに対する所得税は115,000バーツ、所得60万バーツに対しては42,500バーツですので、年間72,500バーツ(=月あたり6,041バーツ)の節税になります。

このうち、生命保険とLTFに使った計25万バーツは5~10年程度、RMFの15万バーツは55歳まで引き出せなくなります。あまり無理な節税はやめておきましょう。節税は計画的に!

個人所得税の計算は、こちらのタイ個人所得税計算機が便利です。

毎年少しずつでも、積み重なれば大きな金額になります。もしいままでは節税をしたことがなくても、今年から初めてみてはいかがでしょうか?

実際に節税をする手順

実際に投資商品を購入し、節税する手順を簡単に説明します。

1. 投資商品を購入

まずは投資商品を購入します。購入できる場所は、

LTF/RMF:銀行、証券会社
生命/年金保険:保険代理店、保険エージェント、銀行

といったところです。

僕の場合は、LTF/RMFはアユタヤ銀行のネットバンキングで購入し、保険は KS Lifeさんにお願いしています。

2. 購入証明書を入手

節税のためには、LTFや保険の購入証明書が必要になります。通常は、年明け頃になると、郵送されてきたり、ネットでダウンロードできるようになります。

(アユタヤ銀行のLTF購入証明書)

(アユタヤ銀行のLTF購入証明書)

アユタヤ銀行のLTF/RMFならネットバンキングから、アリアンツ・アユタヤ社の保険ならスマホアプリからダウンロードできます。

3. 確定申告を行う

毎年3月31日までに、前年分の確定申告を行う必要があります。

会計事務所に税金の計算を依頼している方は、購入証明書のコピーを会計事務所へ送って、確定申告書を作成してもらいましょう。

自分で確定申告をしている方は、下記のブログを参考にしてください。内容は2016年度のものですが、現在でもほとんど変わっていないはずですので、特に問題はないと思います。

4. 還付金を受け取る

還付金の受け取り方については、下記の記事をご参照ください。

この記事では、タイの所得税還付金の受け取り方を解説しています。 2017年度までは、送られてきた小切手を銀行に持っていくだけで...

還付金がいつごろ来るかは運次第でして(笑)、すぐもらえたという人もいれば、7月、8月になってもらえたという人もいます。

日本語で相談できる保険代理店

僕の場合は、生命保険・年金保険を KSライフの片桐さんにお願いしています。日本語で相談できますので、保険に興味がある方は、問合せてみてください。電話・メールのレスポンスも早く、親身になって相談に乗ってくれる方です。

KS Life の原さんに了承をいただいて、連絡先を掲載しておきます。「ランシット日記」を見たとお伝えください。

KSライフ 担当:片桐さん
電話:097-098-4091
電子メール:info@thai-hoken.com

タイ、バンコクを拠点にタイ国内保険会社の保険や年金商品をタイに在住のお客様向けに提供しております。各保険会社の商品をご相談頂いたお客様のニーズに合わせて説明し保険や年金加入のお手伝いをいたします。

コメント

  1. ケイゴ より:

    生命保険控除の最大10万バーツに関してご教示下さい。積立て型生命保険と医療保険2つ加入している場合、合算で最大10万バーツという事でしょうか?

    • nisizawa より:

      その通りです。
      2020年の記事(https://rangsit.net/2020/05/06/income-tax-2020/)を見ていただきたいのですが、2020年から医療保険の上限が2万5千バーツになりました。
      生命保険と医療保険の合算で10万バーツというのはいままでと同じです。