タイのQRコード決済はここまで進んだ。在住者の使い方と旅行者の現実解【2026年版】

タイのQRコード決済はここまで進んだ。在住者の使い方と旅行者の現実解【2026年版】

この記事は2018年に「タイのQRコード決済の発展が止まらない!」というタイトルで書いたものの全面リライトです。当時は「屋台でもQRが使えるようになってきた」というのがニュースでしたが、8年たった今、QR決済はタイの日常そのものになりました。古い情報を消して、2026年時点の実情に書き直します。

タイのQR決済は、いまどこまで使えるのか

先に実感から書くと、いまのバンコクでは「ほとんどの場所で使えます」。ショッピングモールやコンビニはもちろん、街の食堂でも、会計のときにスマホでQRを読んで払っている人がたくさんいます。屋台にはレジもカードリーダーもありませんが、QRコードを印刷した紙が置いてあって、それで済んでしまいます。

タクシーもだいたいQRで払えます。ただ、たまに銀行口座を持っていない運転手さんがいて、そういうときは現金です。めったにありませんが、ゼロではないので、財布を空にしてタクシーに乗るのはおすすめしません。

僕が普段持ち歩いている現金は2,000バーツ程度です。「少額の買い物は現金で」という商店も残っていますし、結局このくらいが落ち着きどころだと感じています。

仕組み: QRコードの裏側にあるPromptPay(プロンプトペイ)

タイのQR決済の土台になっているのが、タイ中央銀行の主導で2017年に始まった「PromptPay」という送金の仕組みです。銀行口座に携帯電話番号などを紐づけておくと、口座番号を知らなくても相手に送金できる、国全体の共通インフラです。登録は8,300万件近くに達していて(2026年5月時点、NITMX調べ)、タイの総人口(約6,600万人)より多い計算になります。

店に置いてあるQRコードは、この送金の宛先を画像にしたものです。だから屋台のQRで払うというのは、実は「お店の人の口座に直接振り込んでいる」のとほぼ同じことだったりします。個人間の送金は基本無料(5,000バーツ以下は無料、それを超えても数バーツ程度)なので、日本の銀行振込の感覚からするとかなり気楽です。

在住者向け: PromptPayの登録はアプリで数分

タイに住んでいて銀行口座があるなら、PromptPayの登録は簡単です。僕はカシコン銀行(K PLUS)とSCB(SCB Easy)の2つを使っていますが、どちらも銀行アプリの中の設定から数分で登録できました。支店に行く必要はありませんでした。

ひとつだけ外国人ならではの注意があります。タイ人は国民ID番号(13桁のCitizen ID)を口座に紐づけられますが、国民IDを持たない外国人は対象外です。僕たちが紐づけられるのは基本的に携帯電話番号です。つまりタイのSIM(+66の番号)を持っていることが実質的な前提になります。

登録してしまえば、あとはタイ人と同じように使えます。買い物のQR払いだけでなく、個人間の送金や割り勘もアプリで一瞬です。

面白い文化だと思うのは、振込をお願いするときに口座番号を伝えるのではなく、自分のQRコードの画像をLINEなどで送ることです。銀行アプリから自分の受け取り用QRを画像として保存できるので、それを送るだけ。相手はそれを読み込むだけなので、口座番号の打ち間違いが起きません。僕もすっかりこちらに慣れました。

K PLUSで作成した受け取り用QRコード(一部加工)
K PLUSで作った受け取り用QR。これをそのままLINEで送る(画像は一部加工しています)

お店側から見た小ネタ

お店の立場の話も少しだけ。QR払いは店側に着金通知が届くのですが、決済が完了していないのに「払いました」という顔をして帰ってしまう客がたまにいるそうです。だから屋台や食堂では、お客さんの支払い完了画面ではなく、自分の通知を確認してから商品を渡す店が多いです。もし店先で「ちょっと待って」と言われても、疑われたと気を悪くしないであげてください。

旅行者はどうすればいい? 正直な答え

ここからが旅行の方向けです。結論から言うと、短期の旅行なら無理にQR決済を使う必要はありません。クレジットカードと現金で十分です。

「外国人旅行者でもタイのQRが使える」とうたうサービスは、実はあります。2025年にタイの観光庁とカシコン銀行が始めたTAGTHAi Easy Pay(PAY&TOURプリペイドカード)は、空港やバンコク市内のカシコン銀行両替ブースでパスポートを見せるだけで無料で作れることになっています。TrueMoney Walletという電子マネーも、パスポートとタイSIMがあれば登録できます。ただしTrueMoneyの基本登録のままで払えるのはお店用のQRだけで、屋台に多い個人のQRに払うにはタイの運転免許証といった追加書類が要ります。

ただ、正直に書きます。僕はバンコクに住んでいて、これらの観光客向けサービスを使っている旅行者をまだ見たことがありません。日本から来る知人も、全員クレジットカードと現金で済ませています。事前に調べて、登録して、チャージして……という手間が、数日の旅行に見合わないのだと思います。

それに旅行者がつまずきやすい落とし穴もあります。屋台や個人商店のQRの多くは、店主個人の口座に紐づいた「個人用QR」で、外国のアプリからは払えません。中国のAlipayやシンガポールの銀行アプリがタイで使えるようになった、というニュースは本当ですが、それが通じるのは対応済みの「店舗用QR」だけです。見た目はほとんど同じなので、「使えるはずなのに使えない」が起きます。

旅行者の現実解はシンプルです。モールやチェーン店はクレジットカード(タッチ決済)、屋台や市場は現金。バンコクの地下鉄(MRT)は2026年6月からVisa/Mastercardのタッチ決済でそのまま乗れるようになりました(BTSスカイトレインはまだ未対応です)。現金は1日あたり1,000〜2,000バーツも持っていれば足ります。両替直後は1,000バーツ札ばかりなので、コンビニで水でも買って崩しておくと屋台で使いやすくなります。

タイでの支払い方の使い分け(旅行者と在住者)

PayPayはタイで使える?(日本との互換性)

「日本のスマホ決済がそのまま海外で使える」という話を聞いたことがある方もいると思います。2026年7月時点の答えはこうです。

日本とタイのQR決済の互換性(2026年7月時点)

PayPayはタイでは使えません。 PayPayの海外支払いモードが対応しているのは韓国と台湾だけです。d払いや楽天ペイも同様で、タイのQRを日本のアプリで読める状況にはなっていません。au PAYは2026年に海外でのコード払いを始めましたが、こちらも対象は韓国だけです。

面白いのは、逆方向はすでに動いていることです。タイ人が日本を旅行するとき、タイの銀行アプリのまま日本の店で支払える仕組みが広がっています。ルートは2つあって、ひとつはK PLUSなどタイの銀行アプリがAlipay+という国際ネットワークに入っていて、日本のPayPay加盟店でそのまま使えるもの(PayPay公式の対応ウォレット一覧にもK PLUSが載っています)。もうひとつはPromptPayのQRを日本の店側が読み取る直接方式で、渋谷109など約9,000店(2026年2月時点)に導入されています。

実際、僕のK PLUSアプリにも「QR Pay」を開くと「Domestic」と「Cross Border」の切り替えがあり、Cross Border では Japan、China、South Korea といった国を選べるようになっています(銀行アプリはセキュリティのためスクリーンショットが撮れないので、画像でお見せできないのが残念ですが)。日本人がタイでQRを使えるようになるより先に、タイ人が日本でQRを使えるようになった、というのが2026年の現在地です。

なおタイは、シンガポール・マレーシア・インドネシアなどASEAN各国や中国・香港とは、お互いの銀行アプリで相手国のQRを読み合える「双方向」の連携をすでに始めています。日本もタイ中央銀行の連携リストに名前はあるのですが、中身はいま書いたタイ→日本の一方通行だけ。双方向の輪に入るのはこれからです。

注意点: 便利さの裏の詐欺

最後に注意点をひとつ。QR決済が当たり前になったぶん、タイでは決済まわりの詐欺も増えています。店先のQRステッカーの上に偽のQRを貼って、振込先を詐欺師の口座にすり替える手口が報告されています。また、PromptPayの送金は即時に完了するので、間違えて送ったお金を取り戻すのはかなり大変です。送金前の宛先確認画面で、相手の名前を必ず見る癖をつけてください。

まとめ

  • タイのQR決済(PromptPay)は屋台から食堂まで浸透済み。在住者なら銀行アプリから数分で登録できる(外国人は携帯番号で紐付け)
  • 旅行者は無理にQRを使わなくていい。クレカ+現金1,000〜2,000バーツが現実解
  • PayPayなど日本のQR決済はタイではまだ使えない(2026年7月時点)。逆にタイ人は日本でタイのアプリを使える
  • 現金が完全にいらなくなる日は、まだもう少し先

タイのお金まわりでは、カシコン銀行のクレジットカードや、タイで働いた人の年金一時金の記事も書いています。よければどうぞ。

日本とタイの間の送金手段の比較は、日本⇔タイの海外送金はWiseが基本【2026年版】手数料比較と8月の規制変更までにまとめています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました