タイ中央銀行が、銀行の仮想通貨取引を禁止した意味を考える

目次

タイ中央銀行による禁止通達

2017年2月13日の各社の報道によると、タイ中央銀行は、仮想通貨を扱わないよう、タイ国内の金融機関に通達を出したとのことです。

日本語記事

・「タイ中央銀行 仮想通貨に関わらないよう金融機関に要求」(NHKニュースウェブ 2018年2月13日)
「タイ中央銀行、国内金融機関の仮想通貨取引禁止」(newsclip 2018年2月13日)

タイ語の記事にはもう少し詳しく載っていました。

「タイ中央銀行、銀行の仮想通貨取引禁止」(Post Today紙、タイ語)

通達では、以下の5点を禁じています。

  1. 金融機関自身の利益、または顧客の利益を目的とした、仮想通貨への投資・売買
  2. 金融機関を窓口にした仮想通貨の取引サービス
  3. 顧客同士が仮想通貨を取引できる、仮想通貨取引所の設立
  4. クレジットカードによる仮想通貨の購入
  5. 顧客に対する仮想通貨への投資や取引に関する支援または助言

また、口座の開設においては、身元確認を徹底するよう求めています。

仮想通貨取引所への影響は?

ここからは私見になります。

現在、タイ中央銀行は仮想通貨を「通貨」とは見なしておらず、物品と同じように扱っています。このため、タイバーツを使って仮想通貨を買うことはできますが、仮想通貨を外貨(米ドル、日本円など)と両替することはできません。また、タイの仮想通貨取引所は、「仮想通貨というモノの通信販売所」という扱いです。

前述の通達は、金融機関を対象としたものであり、タイの取引所は対象になっていません。このため、タイの取引所における仮想通貨の取引を禁止したわけではありません。取引所は以前と同じように取引が可能です。

また通達では、金融機関自身による仮想通貨の売買や、顧客への販売を禁止していますが、銀行と取引所の取引については触れられていません。仮想通貨取引所と銀行の取引についても、これまで通りでしょう。

つまり、取引所への影響は全くないというのが私の意見です。

では、影響を受けるのは…?

今回の通達の影響を受けるのは、取引所ではなくて、実はアユタヤ銀行じゃないでしょうか。

アユタヤ銀行と、その母体である三菱UFJ銀行は、仮想通貨の導入に向けて積極的に動いています。

「仮想通貨で決済を 三菱UFJが「MUFGコイン」発表」(朝日新聞 2017年10月2日)

タイは海外送金の法規制がかなり厳しい国です。銀行が仮想通貨で海外送金をできるようになったら、送金規制が形骸化してしまう。それを防ぐために先手を打ったのが、今回の通達ではないでしょうか。

こんな記事もあります。

「アユタヤ銀行(クルンシィ)が石油化学会社と提携し、国際送金を迅速化し顧客維持を支援」(ripple.com 2017年12月18日)

この内容が事実なら、アユタヤ銀行はすでに仮想通貨による海外送金を実用化しているが、今回の通達により今後は実施できなくなった、ということになります。

今後はどうなるの?

完全な予想になりますが、タイ中央銀行もどうしたらいいかわからないんじゃないでしょうか。他の国が規制を決めるのを見てから決めるとか、日本と中国で規制が決まったら、それの良いとこ取りで決めるのがタイらしいような気がします。

一般人がタイの取引所で取引するなら影響はないと思いますが、ニュースはよく見たほうが良いですね。このブログでも続報があればなるべくお知らせします。