【死亡事故多発】ラオスのカーシー・ナーン道路の情報まとめ

カーシー・ナーン道路

(雨季のカーシー・ナーン道路)

ラオスのビエンチャン県カーシー郡とルアンパバーン県ナーン郡を結ぶ道路、通称カーシー・ナーン道路は、2016年頃にできた新しい道路です

首都ビエンチャンから、ヴァンビエンとカーシーを経由して、世界遺産のルアンパバーン(ルアンプラバン)へ陸路で移動するときによく使われています。

しかし、山岳地帯を通るため、勾配がきつく、大部分が未舗装のため、事故が多発しています。2019年3月には、この道路から自家用車が転落し、乗っていたタイ人家族5人全員が死亡する事故も起きました。

この道路を利用する方は少ないと思いますが、注意喚起として情報をまとめておきます。通行の際はよく情報を収集すると共に、雨季や夜間の通行はなるべく避けるようにしてください。可能であれば、旧道の国道13号線を、乾季の昼間に通行することをおすすめします。

目次

地図

カーシー郡とルアンパバーンを結ぶ道路は、以前は下の地図の国道13号線が主に使われていました。

2016年頃に、下の地図の新道(カーシー・ナーン道路)が完成しました。勾配は急ですが、距離が短縮されるため、この新道を利用する車が増えています。

カーシー・ナーン道路を通ると、ビエンチャンからルアンパバーンまでは約40kmの短縮に、ビエンチャンからサイニャブリーまでは約105kmの短縮になります。ただ、この新道は近道ではありますが、勾配が急で、危険な道路です。

この道路では、大型バスや大型トラックといった大型車両の通行は禁止されています。しかし、こっちを通るとガソリン代が節約できるため、ガソリン代を節約してお小遣いにしたい運転手が、危険なこの道を選択するようです。現在は、中国とラオスを結ぶ高速鉄道の資材を運ぶ大型トラックが、この道をよく通っていると聞きます。

外務省による注意喚起

2019年05月28日付で外務省海外安全ホームページに掲載された注意喚起(引用元 )を転載しておきます。

【注意喚起】雨季における陸路移動について

1 報道によると、昨年の豪雨で被害を受けたビエンチャン県カシー郡とルアンパバーン県ナーン郡とを結ぶ道路(カシー・ナーン道路)の68km地点付近、及び国道4C号線の一部については、現在修復作業が進められているが、道路状況はまだ悪い模様です。当局は、トラック等の重い車両で走ることは避け、雨天に運転する場合は細心の注意を払うように呼びかけています。

2 昨年は、同道路において大型バスの転落死傷事故が発生したほか、邦人が土砂崩れに巻き込まれた被害もありました。

3 報道では、国道13号線でプークーン郡を抜けるルートの方が安全とされていますが、国道13号線についても、バンビエン以北は急勾配の悪路の山道が続くので、スリップによる転落事故、落石や崖崩れに巻き込まれる危険があります。また、過去には夜行バスに対する襲撃事件も発生していることから、やむを得ず利用する場合は、夜間の通行を避けるとともに、熟練の信頼できるドライバーに運転させるなどの十分な注意が必要です。

4 また、北部に限らず、雨季に陸路で移動することは一般的に危険が伴います。特に長距離バスは、悪路に加え整備不良や運転ミス等の要因で、スリップに伴う横転や転落等の事故が毎年あります。本年4月にも、ビエンチャン・チャンパサック間を結ぶ夜行長距離バスが橋から転落して10数名が死傷する事故が発生しています。夜間の利用は控えるとともに、日中の便であっても、天候やルートの道路状況等を事前によく確認しておくことをお勧めします。

カーシー・ナーン道路の詳細

タイのウェブサイト(出典 )に、カーシー・ナーン道路の詳細が載っていましたので簡単にまとめておきます。2019年3月2日時点の情報です。

カーシー市より

  • 最初の8km:平坦な舗装道路。沿道に集落あり
  • 8-25km区間:勾配の緩いアップダウンと平坦路の繰り返し。舗装はされている。ところどころに集落あり
  • 25-35km区間:上り坂が続き、ときには厳しい勾配。道路表面は赤土で固められている。ところどころ、特にプージア山の頂上では、まだ赤土による舗装がされていない箇所もあり、大きめの岩石が転がっている
  • 35-39km区間:未舗装の下り坂
  • 39-58km区間:山間部の短い平坦路を抜けると、山を登る坂道になるが、これまでの坂ほど急ではない。その後長い下り坂
  • 58-68km区間:丘のアップダウン路。大きな丘を越えたり、密林を通り抜けたり。路面は未舗装の砂利道。ナーン郡近くになると締め固められた砂利道になる

カーシー・ナーン道路で起きた事故

2019年3月1日に、この道路を通ったトヨタ製ピックアップトラックが崖から転落し、乗っていたタイ人の家族5人(男性3名、女性2名)が全員亡くなるという事故が起きました。

事故が起きたのは夜10時ごろで、この道を通るのは初めてだったようです。

また2019年8月19日には、この道路を通ったバスが崖に転落し、中国人13名(当初の報道は14名)が亡くなる事故が起きました。バスには中国人44人とラオス人2人の計46人が乗っていました。

事故後の現場の状況です。

バスが落下した崖の高さは、70~100mほどありました。ルアンパバーンの病院で負傷者は、ブレーキが効かなくなったと話していたそうです。

この事故を受けて、在ラオス日本大使館は2019年8月21日、「カシー・ナーン道路における死傷事故の発生」という通知を出しています。

○19日夕、ルアンパバーン県ナーン郡を走行中の団体観光バスが転落し、乗客13名が死亡する事故が発生しました。
○雨季における地方都市への陸路移動は危険です。長距離バスのご利用は可能な限りお控えください。

1 報道によると、19日夕、46人乗りの団体観光バスが、ルアンパバーン県ナーン郡ナムアン村のナムガオ橋から約100m下方へ転落し、中国人観光客13人が死亡、残りの乗客も全員負傷し病院へ運ばれた模様です。

2 ビエンチャンとルアンパバーンを結ぶカシー・ナーン道路は、国道13号線より近道となりますが、急勾配や急カーブが多く、特に雨季には土砂崩れが多発するなど道路状況が非常に悪いため、本年5月末には当局より注意喚起が出されていました(当館からも注意喚起発出済み)。今回の事故原因はまだ特定されていませんが、当局は、急勾配かつ急カーブの続く悪路により運転手が車を制御できなかった可能性もあるとしています。
なお、国道13号線についても、バンビエン以北は急勾配の悪路の山道が続くので、スリップによる転落事故、落石や崖崩れに巻き込まれる危険があります。

3 北部に限らず、雨季に陸路で移動することは一般的に危険が伴います。天候やルートの道路状況等を事前によく確認しておくことをお勧めします。特に長距離バスは、悪路に加え整備不良や運転ミス等の要因で、スリップに伴う横転や転落等の事故が毎年ありますので、可能な限り利用を控えてください。

カーシー・ナーン道路の状況

2017年7月

大雨で通行止めになりました。

2018年8月

プーカオラック山付近で、増水した川から水が溢れています。

2019年8月

ルアンパバーンの土木課が補修を続けているそうですが、降り続く雨のため、小型車の通行は難しそうです。雨季は避けたほうが良いですね。

2019年9月10日

この道をバンで通った方から写真をもらいましたので、許可を得て転載しておきます。

↓高所から見たところ。このあたりは道路の状態も良さそうです。

↓ぬかるんだ道路。霧でよく見えませんが、前方にいる大型トラックは、ショベルカーに牽引してもらっているようです。でないと小川になっている部分を渡れないのでしょう。

↓そのトラックが反対方向から来たトラックとすれ違います。

↓道幅はギリギリ。これ以上外側に寄ると路肩に転げ落ちそうです。人が降りてトラック同士がぶつからないか確認しています。

↓路肩に落ちたトラック。この道路ではこういう事故は毎日のように発生しています。死亡事故でなければ新聞に載ることもありません。