バンコクの高架鉄道BTSでは、2018年6月後半になって故障による遅延が頻発しています。
故障が起きたのは、2018年6月では6日朝、12日朝、13日夕方、15日夕方、18日夕方、22日昼間、22日夜、23日夜、24日夕方、25日朝、25日午後、26日朝、27日朝のなんと13回。
故障は、2017年に45回、2018年は6月までの半年で31回と多発しており、利用者からの批判が高まってます。
BTS 遅延の原因は?
各紙の報道によると、遅延は BTS の列車運行システムの故障によるものだそうです。
BTS は、カナダ・ボンバルディア社の CITYFLO 450 という列車運行システムを採用しています。
(CITYFLO 450 出典:ボンバルディア社ウェブサイトより)
これは、「CBTC」と呼ばれる自動列車制御システムで、ウィキによると、「列車との通信がどれか1つでもつながらなくなると、(中略)列車の一時的な徐行や停止、あるいは機能制限モードでの運行といったフェイルセーフモードを使わなければならない」というリスクがあります。
BTSは、通信障害により一部の列車との通信が切れたため、すべての列車を徐行・停止したのが遅延の原因、と説明していますので、おそらくこの状態になっているのでしょう。
では、通信障害の原因は?
BTS の列車運行システムでは、以前は他の通信方式(何かは不明)を使っていましたが、1年前から 2.4GHz 帯を使う無線通信方式への移行を進めています。
BTS は、この 2.4GHz 帯に電波干渉があり、列車との通信に障害が起こった、と説明しています。
2.4GHz 帯は、一般に開放されている周波数帯で、誰でも許可を得ることなく使用できます。無線LAN (Wi-Fi) やドローンの通信に使われているのもこの周波数帯です。
タイの通信会社 DTAC が最近になって 2.3GHz 帯のサービスを開始したため、最初は DTAC の電波が干渉しているのでは、と疑われました。
そこで DTAC は6月26日(火)の朝、BTS 沿線にある 2.3GHz 帯のサービスを全て停止。それでも当日朝に BTS の遅延は再発しましたので、DTAC の 2.3GHz 帯は無実でしょう。
そうすると残る容疑者は Wi-Fi となります。BTS は、周波数帯を 2.4GHz 帯から電波干渉の少ない他の周波数帯に移す作業を行っており、6月29日(金)には完了する、と言っています。
原因が通信干渉にあり、その対策を行うなら、6月29日(金)以降はもう遅延は発生しないはずです。めでたしめでたし。しかし本当にそうなるのでしょうか?
本当に通信障害だけが原因なのか?
「BTS の故障の原因は、通信障害だけではない」と指摘する人もいます。
こちらの MGR ONLINE 紙の記事(タイ語)によると、バンコク大学研究センターの交通関係の研究員は次のように述べています。
「BTS は、最初はシーメンス製車両とシーメンス製の運行システムを使っていたが、後になって中国製の車両を導入し、新旧車両が混在することになり、運行システムを刷新した。そのときから障害は発生しており、真の原因は通信干渉ではない」
もしそうなら、通信干渉の問題を解決しても、BTS の遅延は発生することになりますね。
いずれにせよ、6月29日(金)以降に遅延が起きるかどうかを見守りたいと思います。
それでも引き続き遅延が起きるなら、一部の利用者が求めている経営陣の刷新も、現実味を帯びてくるかもしれません。
コメント
大変、興味深く拝見いたしました。最終的な原因の報告がなされましたら、是非教えていただきたく存じます。
また、鉄道関係者にもこのページを紹介したいと思いますが、よろしいでしょうか。
ご紹介はご自由にどうぞ。していただければ嬉しいです。
その後BTSでは何回か小規模な障害が起きているのですが、結論がまだでていないので、もう少し様子を見たいと思っています。