海外からタイに送金すると税金がかかる?【2026年版】外国源泉所得の新ルールをやさしく解説

海外からタイに送金すると税金がかかる?【2026年版】外国源泉所得の新ルールをやさしく解説

「日本の口座からタイにお金を送ると、タイで税金を取られるらしい」。2024年ごろから、タイ在住の日本人の間でこんな話を聞くようになった。半分は本当で、半分は誤解だ。この記事では、2024年に始まったタイの「外国源泉所得」の課税ルールを、タイで暮らす個人の目線で整理する。

先にお断りしておくと、僕は税金の専門家ではない。この記事は歳入局の通達と大手会計事務所の解説をもとにした制度の説明で、個別のケースの判断はできない。まとまったお金を動かす前には、必ずタイの会計事務所か税理士に確認してほしい。

何が変わったのか ── 2024年からの新ルール

タイの歳入局は2023年9月に通達(Por.161/2566)を出し、国外で得た所得の扱いを変えた。ポイントはこうだ。

タイの税務居住者が海外で得た所得は、タイに持ち込んだ年に、タイの課税所得になる。

以前は「所得が発生した年と同じ年にタイへ持ち込んだ場合だけ課税。年をまたいで持ち込めば非課税」という運用だった。海外で得た利益を翌年に送金すれば税金がかからない、という抜け道が長年あったわけだが、2024年1月1日以降の持ち込みからこれが封じられた。

ただし救済もある。追加の通達(Por.162/2566)で、2023年12月31日までに発生した所得は、2024年以降に持ち込んでも新ルールの対象外とされた。昔から持っていた海外の資産を送る分には、この新ルールでは課税されないということだ。

そもそも自分は対象? ── 180日ルール

このルールの対象になるのは「タイの税務居住者」だけ。判定はシンプルで、1月〜12月の暦年に、タイに通算180日以上滞在したかどうかだ。連続している必要はなく、ビザの種類も関係ない。

  • タイで働いている駐在員・現地採用の人 → ほぼ確実に税務居住者
  • リタイアメントビザやDTVビザで年の大半をタイで過ごす人 → 税務居住者
  • 年に数回旅行で来るだけの人 → 対象外

なお、日本に住んでいる人がタイの家族に仕送りする場合、送る側は日本の居住者なのでこの話とは関係ない。あくまで「タイに180日以上住んでいる本人」が「自分の海外所得」を持ち込むときの話だ。

課税されるのはどんなお金?

対象になるのは「2024年以降に海外で発生した所得」をタイに持ち込んだ場合だ。たとえばこんなものが挙げられている。

  • 海外の証券口座で得た株の売却益や配当
  • 海外の不動産の家賃収入
  • 海外の会社からもらった給与や報酬

逆に、対象にならないお金もはっきりしている。

  • 2023年末までに発生した所得・貯蓄(グランドファザリングで保護)
  • 元本。所得ではない預貯金の取り崩しは、そもそも課税所得ではない
  • タイ国内で組成された商品(タイの銀行預金、SETの株、RMFなどの投信)の利益 ── これは元々タイ国内源泉の話で、今回のルールとは別枠

問題は、送金したお金が「2023年以前の貯蓄」なのか「2024年以降の利益」なのかを、証明する責任が納税者側にあることだ。口座の残高証明や取引記録が示せないと、送金額の全体を課税所得と見なされるリスクがあると会計事務所は注意している。海外の口座からまとまった額を送る予定がある人は、いつ時点の残高がいくらだったかの記録を残しておきたい。

「送金」の範囲は銀行振込だけではない

歳入局は「タイへの持ち込み」を広くとらえていて、銀行送金のほか、海外口座からのATM引き出し、海外発行クレジットカードでのタイ国内決済、現金の持ち込みも含まれると解釈されている。ただしカード決済やATM引き出しの細かい扱いについては、2026年7月時点でも歳入局から詳しいガイダンスが出ておらず、専門家の間でも「リスクが残る」という言い方にとどまっている。ここは今後の発表を待つしかない。

タイで働いている人の給料は関係ない

誤解が多いところだが、タイの会社からもらう給料はタイ国内の所得なので、今回のルールとは無関係だ。従来どおり毎月源泉徴収され、年に一度の確定申告で精算される。僕のように、タイの給料だけで暮らしている分には、新ルールで何かが変わることはない。

タイの所得税のしくみと節税(RMFなどの控除)については、タイの個人所得税を節税する方法と手順にまとめている。

「2年以内なら非課税」の緩和案 ── まだ確定していない

2025年に入って、歳入局はこのルールを緩める方針を示した。「2024年以降に発生した所得でも、発生した年またはその翌年のうちにタイへ持ち込めば非課税にする」という案で、勅令または省令として起草中と報じられている。

ただし、2026年7月時点でこの緩和はまだ法制化されていない。閣議の承認を経て公布される必要があり、現時点で有効なのは上に書いたPor.161/162の枠組みのままだ。ネット上には「2年以内なら非課税になった」と既定のことのように書いている記事もあるが、確定と未確定を分けて見てほしい。実際に送金の判断をする時点で、最新の状況を専門家に確認するのが安全だ。

「バレなければいい」は通用しない ── CRSの話

「海外の口座なんて、タイの税務署には分からないのでは」と思うかもしれない。ここは前提が変わっている。タイは2023年からCRS(共通報告基準)による口座情報の自動交換を始めていて、日本を含む参加国と、金融口座の情報を毎年やり取りしている。日本の銀行・証券口座の情報はタイの歳入局に、タイの口座情報は日本の国税庁に、自動的に届く仕組みが既に動いている。

「見つからないだろう」を前提にした行動は、もう成り立たないと考えたほうがいい。

日本で税金を払った所得はどうなる? ── 二重課税の調整

「日本で源泉徴収された配当をタイに送ったら、タイでも課税されて二重取りでは」という疑問はもっともだ。日本とタイの間には租税条約(1990年発効)があり、二重課税は外国税額控除などで調整される仕組みになっている。

ただし、どの所得にどちらの国の課税権があるか、控除がいくら使えるかは所得の種類ごとに違い、ここは素人判断が危ない領域だ。該当しそうな人は、日本とタイ双方の税務に詳しい専門家に相談してほしい。

本帰国や相続との関係

このルールは「所得税」の話で、相続税・贈与税は別の体系だ。「海外に住んでいれば日本の相続税がかからない」という誤解については相続税の10年ルールの記事に書いた。

また、本帰国してタイ滞在が年180日未満になれば、その年はタイの税務居住者ではなくなり、このルールの対象からも外れる。帰国前後のお金まわりの段取りは本帰国前にやることリスト【お金編】タイの銀行口座を維持したまま本帰国する方法にまとめている。

まとめ ── 普通の駐在員はあわてなくていい

  • 2024年から、タイ税務居住者(年180日以上滞在)が「2024年以降に海外で発生した所得」をタイに持ち込むと、持ち込んだ年の課税所得になる
  • 2023年末までの所得・貯蓄と、元本の送金は対象外。ただし区別の証明は自分でできるようにしておく
  • タイの給料で暮らしている人には影響なし
  • 「2年以内の持ち込みは非課税」の緩和案は起草中で、2026年7月時点ではまだ有効ではない
  • CRSで口座情報は自動交換される時代。まとまった送金の前には専門家に相談を

日本⇔タイのお金の動かし方そのもの(手数料や送金手段の比較)は、日本⇔タイの海外送金の記事を参考にしてほしい。

※この記事は2026年7月時点の情報です。税制は今後の勅令・省令で変わる可能性があります。実際の申告や送金の判断は、必ずタイの会計事務所・税理士に確認してください。

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