タイで産業用大麻の栽培が解禁に ー 今後の動向を予想する


タイでは2018年から、産業用大麻(ヘンプ)の栽培・販売・所有が、条件付きで解禁されました。

タイ北部にあるチェンマイ県、チェンラーイ県、ナーン県、ターク県、ペッチャブーン県、メーホンソン県の指定15郡において、事前に生産計画を提出し、許可を受けた公的機関に限り、栽培・販売・所有が認められます。また、この措置は3年後に見直され、一般市民による栽培も許可される可能性が出てきました。

そうなると、3年後には一般家庭における大麻の栽培が認められ、家で育てた大麻を一服プカーリ(^。^)y-.。o○ となるのでしょうか?

この記事では、この「産業用大麻の栽培解禁」の意味と、今後の展望について解説します。

目次

産業用大麻とは?

大麻にはさまざまな品種があります。

一般に知られているのは、薬物としての大麻でしょう。ここでは、それを嗜好用大麻(マリファナ)と呼びます。

嗜好用大麻(マリファナ)には、陶酔成分が含まれており、摂取すると陶酔感が得られます。日本では大麻取締法、タイでは麻薬法の取締対象になっている禁止薬物です。世界の一部の国や地域には、嗜好用大麻を合法としている場所もありますが、日本やタイでは違法ですので、絶対に手を出してはいけません。

産業用大麻(ヘンプ)は、陶酔成分が少ない商品作物です。茎・葉・種は、繊維・バイオエタノール・油・化粧品・食品などの原料になります。生育期間は75~90日程度と短く、手間もかかりません。陶酔成分が少ないので、吸っても陶酔感は得られないと言われています。今回、解禁された産業用大麻も、麻薬成分の含有量が 1% を超えていると処罰されます。

嗜好用大麻と産業用大麻では、品種も栽培方法も異なります。

種類 麻薬成分(THC)含有量 草の高さ 栽培方法
嗜好用大麻 1-10% 2m以下 間隔を空けて植え、横に伸ばす
産業用大麻 1%以下 2m以上 密集して植え、縦に伸ばす

(表1)

この2つは全く違うもの、と考えるのが適切でしょう。今回の措置で、栽培が認められたのは産業用大麻であり、嗜好用大麻は依然として禁止薬物のままです。

栽培解禁の理由とは?

タイ北部の山岳地帯は、かつて世界有数のケシ(麻薬)の栽培地帯でした。その状況を改善しようと、プミポン前国王(昨年死去)の母が設立した「メーファールアン財団」がコーヒー栽培を開始した話は有名です。

現在、山岳地帯ではコーヒーや茶が主要作物になっていますが、まだまだ貧しく、現金収入になる作物が不足しています。そのため、産業用大麻の栽培が許可されれば、山岳地帯に住む住民への経済的支援になります。今回の解禁では、栽培できる地域が、6県15郡に限定されています。これは、他の収入を得ることが難しい、山岳地帯を対象にしているのです。

栽培された産業用大麻は、主に繊維として、服やマフラー、帽子などに加工されることが想定されています。

(出典:コム・チャット・ルック紙 産業用大麻を使った製品の例)

産業用大麻は日本でも栽培されている

実は日本でも、都道府県知事が許可する大麻取扱者免許を取得すれば、産業用大麻の栽培は可能です。2015年に産業用大麻の生産量が全国1位だったのは栃木県で、年間収穫量は2.3トン。ただし高齢化が進み、生産量は減少傾向にあるようです。

リンク:許可があれば違法ではない。「産業用大麻」ってどういうもの? (日本語)

解禁までの経緯

2016年にタイ麻薬撲滅委員会は、

  1. 嗜好用大麻(マリファナ)
  2. 産業用大麻(ヘンプ)
  3. クラトム(植物の葉で、噛むと興奮作用や覚醒作用がある)
  4. メタンフェタミン(覚醒剤)

を麻薬植物・薬品リストから除外することを提案しました。

この提案を受けて、タイ内閣は2016年12月27日、産業用大麻のみを、条件付きで商品作物として認めることを閣議決定しました。

この閣議決定の約1年後の2017年12月、保険省令により、タイにおける産業用大麻の栽培・販売・所有が可能になりました。ただし産業用大麻を栽培できるのは、指定された6県15郡において、事前に生産計画を提出し、許可を受けた公的機関のみです。一般人が栽培することはできません。また、栽培している産業用大麻から1%以上の麻薬成分が検出された場合は処罰されます。これは、産業用大麻に混ぜて嗜好用大麻を栽培することを防ぐための措置です。

上記の省令は3年後に見直され、一般市民による栽培の許可、用途の多様化も検討されるそうです。

ソース:อนุมัติ6จังหวัด15อำเภอ ปลูก”กัญชง”พืชเศรษฐกิจได้ (タイ語)

タイ政府の意向は?

上記の閣議決定からわかることは、タイ政府は、人体に影響のある薬物の栽培・使用を全く認める気がない、ということです。

もし少しでも規制を緩める気があるなら、まずはクラトムを許可するでしょう。それすらも許可しなかったということは、薬物は絶対に認めないという意味です。

3年後に省令が見直され、現在は公的機関のみ栽培できるのが、一般にも許可されるということですが、例えば都会のアパートに住む人には許可されないでしょう。普通に考えれば、タイの高地に住む農家だけが許可されると思われます。

今後の動向は?

タイ政府はこれからも薬物に対しては厳しい姿勢で望むでしょう。

大麻に関しても現状の規制が続きます。産業用大麻は解禁されましたが、許可なく所有するのは違法ですし、たとえ吸ったところで陶酔感は得られません。嗜好用大麻も解禁されないでしょう。

産業用大麻が解禁と聞いて、タイで大麻が吸える!と期待された方もいるかもしれませんが、それは当分先の話になりそうです。