タイの丸亀製麺についてツイッターでつぶやいたところ、意外に反響が大きかったので、少し調べてみました。売上高、利益等については、タイの商務省のサイトで公開されている情報を参照しました。
タイ丸亀製麺の歩み
2011年 設立
日本で丸亀製麺を運営しているのは、株式会社トリドールホールディングスという東証一部上場企業。
タイの丸亀製麺は、最初は日本のトリドールホールディングスの子会社ではありませんでした(後に日本側も出資して日タイ合弁になります)。
こちらの記事によると、「M.T.R.」と「Boutique」というタイの地場不動産会社2社が合弁で設立した「NODU FOODS」というタイの現地法人。この会社が丸亀製麺のタイでのフランチャイズ権を獲得し、丸亀製麺のチェーン展開を開始します。社名の NODU はうどんという単語を逆から綴ったそうです。
設立は2011年1月、2011年10月には資本金を 3,500万バーツに増資しています。
2012年 売上高5,337万バーツ 2,102万バーツの赤字
- 2012年1月:スクンビット49に1号店を開店 →後に閉店
- 2012年5月:Big-C ラチャダムリ店に2号店を開店 →後に閉店
- 2012年7月:フューチャーパーク・ランシット支店を開店 →後に同デパート内のフードコートに移転
着々と店舗を増やしていきますが、後に閉店したところもあります。
2012年9月には資本金を 6,000万バーツに増資しました。2012年度の決算は2,102万バーツの赤字です。
2013年 売上高8,575万バーツ 5,111万バーツの赤字
2013年度の決算は5,111万バーツの赤字でした。
2期連続赤字になり、このままではヤバイと思ったんでしょうか、それまではタイ独資だったんですが、トリドール側が6,000万バーツの新規発行株を引き受け、同社株式の40%を取得、経営に参入します(参照記事:トリドール/タイのFC法人に出資 2013年12月13日)。資本金を1億5,000万バーツに増資しました。
株主比率を見ると、タイ60%、香港40%となっていますので、トリドール側は香港の子会社を経由して出資しているようです。
しかし業績は回復しません。
2014年 売上高1億2,659万バーツ 3,294万バーツの赤字
この頃から、メニューが迷走し、うどん以外の親子丼、カレーなどの提供を開始しました。実際に店舗に行ってみると、オペレーションも混乱していました。
2014年度の決算は3,294万バーツの赤字でした。
2015年 売上高2億4,255万バーツ 3,061万バーツの赤字
11月には資本金を3億7,000万バーツに増資。トリドール側の出資比率は40%のままですので、計1億4,800万バーツを出資したことになります。
2015年度の決算は3,061万バーツの赤字でした。
トリドールの平成27年3月期 決算説明資料によると、タイは『積極出店を継続し、17店舗体制に。黒字化に転換 』『収益を維持しつつ、積極的な出店を継続』となっていますが、設立以来赤字が続いていることを書かずに、「黒字化に転換」とは物は言いようですね。
2016年 売上高2億1,770万バーツ 6,239万バーツの赤字
この頃から、既存店舗を閉鎖し、フードコートに移転を始めています。売上が落ちているのはそのためでしょう。
2016年度の決算は6,239万バーツの赤字でした。
トリドールの平成28年3月期 決算説明資料によると、タイの店舗数は17店舗から出店11店、退店3店で25店舗に。『タイ : テロの影響を受け苦戦。赤字店舗閉鎖による収益改善を図る』とのことですが、テロの影響も少しはあったのかもしれませんが、それ以外の要素の方が多いと思います。
2017年 売上高2億1,276万バーツ 6,876万バーツの赤字
2017年度の決算は6,876万バーツの赤字でした。
トリドールの平成29年3月期 決算説明資料によると、タイの店舗数は25店舗から出店10店、退店8店で27店舗に。また、以前にはなかったタイの売上に関する資料が出ています。それによると、タイでは
- 1店舗平均売上高:296万7千円/月
- 1店舗平均客数:5,432人/月
- 1店舗平均客単価:546円/月
上の数字から計算すると、1日1店舗あたり約30,000バーツを売り上げていることになります。
2012年から2017年まで、なんと6期連続の赤字。累積赤字は6期合計で2億6,683万バーツ。はたしてここから奇跡の復活は可能でしょうか!?
2018年
この記事を書いている2019年3月現在、2018年度のタイ法人の決算はまだ発表されていません。
トリドールの平成30年3月期第2四半期 決算説明資料によると、タイの店舗数は29店舗から退店7店で22店舗に縮小。また、タイの売上に関しては
- 1店舗平均売上高:183万9千円/月(2017年と比較して -38%)
- 1店舗平均客数:4,053人/月(同 -25%)
- 1店舗平均客単価:454円/月(同 -17%)
店舗を小型化した影響があるのかもしれませんが、大幅に減少しています。
タイ丸亀製麺が失敗した原因は?
いろいろ考えられると思います。
- タイの地場企業に任せっきりにした:しかも外食産業の経験がない不動産会社。1号店は話題になって当初は繁盛したものの、その後は店舗経営の不備が目立ちました。
- 目標ありきの海外展開:売上目標、店舗数の目標を達成するために、数の論理で店舗数を増やしましたが、かなり無理な出店もありました。その後、多くの店舗が撤退しています。
ちなみにトリドールは現在も『創業者の粟田貴也社長が掲げるのは2025(平成37)年時点での世界6000店舗の展開』(産経新聞2018年5月3日付記事)という目標を掲げています。 - 日本のやり方の押しつけ:タイでは店員が食器を下げるのが当たり前ですが、丸亀製麺は客が食器を下げるという日本のセルフサービス方式に固執しました。その間店員はボーッと見ているだけ。これではタイ人には受け入れられません。
上の目標にも言えることですが、丸亀製麺という会社には、トップダウン方式で物事を決め、現場からの意見が吸い上げられない企業風土があるように思えます。
今後のシナリオは?
考えられる今後シナリオとしては、
- 黒字転換(難しそう)
- 赤字が続き、タイ側・日本のトリドール側の片方または両方が増資を続ける
- トリドール側がギブアップ。持ち株をタイ側に譲渡、以後はタイ側が経営する(よくあるパターン)
といったあたりでしょうか。今後の展開に注目です。