韓国で不法就労するタイ人と、彼らを支援する闇エージェントの実態!

2015年ころからでしょうか、韓国で不法就労するタイ人が増えてきました。

タイ人の韓国入国が増え、不法滞在問題が浮上した。昨年入国したタイ人のうち約6万5000人が滞在許可期間(90日)を超えるオーバーステイ状態となっている。

(引用元:ライブドアニュース)

上記の記事のほか、タイの現地報道の情報もあわせると、韓国とタイ人の関係は次のようになっています。

  • 2017年に韓国を訪れたタイ人観光客:約50万人
  • そのうち、ビザの期限が切れたが帰国していない者:6万5000人
  • 韓国で不法滞在中のタイ人:7万人~10万人(諸説あり)
  • 韓国への入国を拒否されたタイ人:2015年 約2万人、2016年 約3万人

タイ人の不法滞在者がなんと10万人。ビザ無しで入国できる韓国に行き、ビザが切れても滞在するタイ人が増え続けています。

これを受けて韓国側も、タイ人の入国を厳格化。入国時に取り調べられたり、入国を拒否されるタイ人も増えています。

タイ人の女優も、2017年12月に韓国に入国しようとしたところ、就労目的と疑われて取り調べられ、タイ人のあいだで大きな話題になりました。

(2017年12月には、タイの女優が韓国に入国しようとして、不法就労を疑われて取調室に連れて行かれる事件も発生)

ただし、両国のビザ免除協定は1981年から行われていますので、最近になってタイ人の不法就労者が増えた理由は、ビザだけではなさそうです。LCCで航空券が安くなったことや、韓国の取り締まりが日本などと比較して緩いことなども要因でしょうか。

韓国でタイ人が就く仕事は、農場、マッサージ、売春が主で、月収は4万バーツ程度だそうです。

タイ人不法就労の実態に迫るドキュメンタリー番組

そんなタイ人の韓国不法滞在ですが、タイのテレビ局 Thai PBS は、2018年5月7日に、不法就労のために韓国へ向かうタイ人を題材にしたドキュメンタリー番組を放送しました。いまでも Youtube で見れます(タイ語ですが)。

この番組では、

  • タイの空港から出国するタイ人を取り調べる係官
  • その係官に取り調べられ、白状するタイ人
  • タイ人の韓国渡航を支援する闇エージェントの潜入取材

といった興味深い内容を伝えています。

この番組の内容を、キャプチャを用いながらご紹介したいと思います。以下の写真は全て上記番組からの引用です。

スワンナプーム国際空港にて。出国前に身柄を拘束されるタイ人たち

タイのスワンナプーム国際空港とドンムアン空港には、タイ労働省職業斡旋局の係官が常駐しており、出国するタイ人を取り調べ、就労目的と判断した場合は身柄を拘束しています。

(出典:Thai PBS 空港に常駐するタイ労働省職業斡旋局の係官)

今回は、42人が不法就労のため韓国へ向かうという情報を得て、係官が空港で待ち構えていました。係官は彼らを別室に連れていき、事情を聞きます。

(出典:Thai PBS 不法就労が疑われる人を取り調べ)

係官は不法就労が疑われる人を取り調べますが、飛行機の出発時刻までに証拠を見つけなければなりません。

(出典:Thai PBS エージェントが用意した書類)

不法就労をする人は、エージェントが用意したクリアファイルに、行程表、韓国の入国カード、税関申告書といった、全く同じ書類一式を持っているので、係官が見れば一発でわかるそうです。

(出典:Thai PBS 男性を取り調べる係官)

この灰色の服を来た男性は、韓国へは観光で行くと主張し、就労目的とは認めませんでしたが、自分は裕福だと言いながら携帯電話の残高はゼロ、係官は就労目的と判断し、出国を禁止しました。

(出典:Thai PBS 夫婦を取り調べる係官)

この夫婦は、月収は旦那が18,000バーツ、奥さんが10,500バーツで十分な収入があると主張。

しかし係官がスマホを見ると、親戚から韓国への渡航費を借りていることが判明します。そして係官が家族に電話すると、「韓国へ月給4万バーツで仕事に行くと言ってた」とあっさり白状されてしまいました。根回し不足です(笑)。この夫婦も出国を禁止されます。

この日、係官は31人の出国を禁止、7人を許可、5人は逃亡しています。しかし渡航した7人も韓国で入国拒否される可能性があります。

(出典:Thai PBS 職業斡旋局が出国を禁止した人数の推移)

職業斡旋局は、2016年10月~2017年9月の1年間に、空港で1,136人のタイ人を拘束しました。行き先は多い順に韓国、マレーシア、バレーン、UAE、インドです。

また、2017年10月~2018年6月の半年間に拘束されたタイ人は796人。行き先は多い順に韓国、バレーン、マレーシア、カタール、ロシアとなっています。

不法就労エージェントに潜入取材

次に番組スタッフは、韓国への不法就労を斡旋する闇エージェントに接触します。

不法就労エージェント その1

エージェントは、facebook で「韓国に行って働く」と検索すればたくさん見つかるそうです。違法のエージェントが、そんな簡単に見つかっていいんでしょうか(笑)

(出典:Thai PBS facebook で見つけた韓国への渡航を斡旋するエージェント)

番組スタッフが facebook で見つけたエージェントに連絡を取り、LINE で「韓国に行きたい」と伝えて料金を聞き出しました。

(出典:Thai PBS エージェントはLINEで手数料を提示)

エージェントが提示した料金は3種類。

  • 4万バーツ:エージェント同伴で韓国に渡航(航空券込み)
  • 7万バーツ:エージェント同伴で韓国に渡航+仕事の斡旋
  • 10万バーツ:エージェント同伴で韓国に渡航+仕事の斡旋+入国できない場合は5万バーツの返金を保証

(1バーツ=約3.3円ですが、簡易的には 1バーツ=3円、4万バーツ=12万円で計算すれば大体合ってます)

番組では途中が省かれていましたが、おそらく番組スタッフはエージェントにお金を払って手配を依頼した上で、係官に通報したのでしょう。

(出典:Thai PBS 空港で取り調べられる男性)

このエージェントに斡旋を依頼した3人のタイ人が、ドンムアン空港の出国カウンターに現れたとき、係官が現れ、3人を別室で取り調べます。

(出典:Thai PBS 男性の携帯電話を調べる係官)

3人はあっけなく韓国へ仕事に行くことを認めました。今回、このエージェントに支払った金額はひとり3万バーツ。エージェントが同行しないので少し安くなったそうです。係官は3人の出国を禁止しました。

不法就労エージェント その2

番組スタッフはもうひとりのエージェントにコンタクトします。

(出典:Thai PBS エージェントと電話する番組スタッフ)

「韓国行きは9、15、16、27、28日の便がある」というエージェント。現在紹介できる仕事は、サラダ用の野菜農場、海苔、玉ねぎ農場、養鶏場だそうです。

こちらの料金はひとり 35,500バーツ。エージェントは以前に韓国で働いたことがあり、労働者の気持ちがわかるので、料金を安めにしているそうです(笑)1つ目のエージェントと違って韓国へは同行しないとのこと。

番組スタッフは料金を支払い、エージェントに手配を依頼します。

(出典:Thai PBS パスポートをエージェントに送り、中国のビザを取得してもらう)

まずはパスポートをエージェントに送り、中国のビザを取得します。これは、韓国から中国を巡るという行程表を作り、韓国の入管を信用させるためのテクニックだそうです。こんなことよく思いつきますね・・・

(出典:Thai PBS 渡航前に一軒家に集合)

韓国への出発当日、11人の渡航者たちは空港近くの一軒家に集合し、初めてエージェントと顔を合わせます。

エージェントはタイ人の夫婦で、航空券、行程表、韓国の入国カード、地下鉄の地図などの書類を渡航者たちに配布します。その後、渡航者たちはバラバラになって空港へ。

(出典:Thai PBS エージェントが用意した行程表)

しかし事前の準備も虚しく(番組が通報したのでしょう)、エージェントを含む全員が拘束され、取り調べられます。すぐに渡航者全員が、就労目的であることを認めました。

エージェントも取り調べられ、儲けは渡航者ひとりあたり1万バーツ程度、多い月は120人で120万バーツ(!)の儲けになったと白状します。実際にかかる費用は航空券代、ビザ代、韓国側のエージェントへの報酬などで、かなり儲かるようですね。

今後のタイ人の出稼ぎ先は?

昔は日本で不法就労するタイ人が多かったんですが、最近は減っているようです。外務省の資料によると、不法滞在しているタイ人の数は、

  • 2015年1月1日時点:5,277人
  • 2016年1月1日時点:5,959人
  • 2017年1月1日時点:6,507人

と、増えてはいるものの、韓国の7~10万人に比べると、かなり少ない人数です。

日本で不法滞在が少ない理由は、

  • 日本政府による入国の厳格化
  • 不法就労させる側の罰金を高額化(不法就労助長罪は3年以下の懲役 or 300万円以下の罰金)

あたりでしょうか(下記 @Taniyajapan さんのツイートを参照)。

今後、タイ人が韓国へ出稼ぎに行くのは難しくなるかもしれません。そうなれば、タイ人は次の渡航先を探すでしょう。タイ人はロシアにビザ無しで入国できますので、次の出稼ぎ先は、さきほどの統計で5位に入ったロシアあたりでしょうか。

一方、タイ人は台湾にもビザ無しで渡航できますが、台湾へは合法的に就労するタイ人が多く、不法就労するタイ人はあまりいないそうです。