僕はモスバーガーのファンだ。おいしくて、新鮮な野菜を使ったモスバーガーが好きで、タイでも月に1度は食べている。学生時代はモスバーガーでアルバイトをしていたことがあり、働く側から見ても、良心的な企業だと思っている。
モスバーガーは、2007年3月にタイへ進出した。2017年には店舗を2つ増やして、現在は7店舗である。一見すると、順調に展開しているように見える。しかし、僕がよく行くモスバーガー・フューチャーパーク店には、あまりお客さんが入っていない。
マクドナルドは満員なのに、なぜモスバーガーは…?
ガラガラである。この写真を撮ったのは、日曜日の夜6時。ショッピングセンターには、たくさんのお客さんがいた。しかしモスバーガーにはお客さんがほとんどいない。実は、いつ行ってもこんな感じである。
同じ時刻、マクドナルドはお客さんで溢れていた。
なぜマクドナルドにはお客さんがいるのに、モスバーガーにはいないのだろう?
この記事ではその理由を考えてみたい。
実は、タイではマクドナルドのモスバーガーの値段は同レベル
日本では、
- マクドナルド:安くて満腹になれる。しかし味はそこそこ
- モスバーガー:高いけど美味い
というイメージが定着している。
では、タイのモスバーガーは高いのだろうか?
実はマクドナルドとモスバーガーの値段はほとんど変わらない。
(単位:タイバーツ) | マクドナルド | モスバーガー |
---|---|---|
フィッシュバーガーセット | 109 | 139 |
てりやきバーガーセット | 159 | 149 |
ビッグマックセット/ダブルモスバーガーセット | 177 | 189 |
フィッシュバーガーなどのセットはマクドナルドが安いものの、テリヤキバーガーやダブルバーガーのセットはほとんど同じ価格だ。
これは、タイにおけるマクドナルドのブランド戦略が影響している。タイのマクドナルドは、少し高めの値段に設定して、中流以上のタイ人や外国人をターゲットにしている。そのため、価格帯がモスバーガーと重なっているのだ。
つまりタイでは、
- マクドナルド:値段は少し高め。味はそこそこ
- モスバーガー:値段は少し高め。味はおいしい
という状況である。同じ価格帯で、モスの方がおいしい。それにもかかわらず、モスにはお客さんが入っていない。
つまりモスバーガーのブランドイメージや魅力が、タイ人に伝わっていないのだと思う。では、なぜ伝わっていないのだろう?
その商品名、タイ人が理解できますか?
ひとつ例を挙げたい。タイのモスバーガーは、2018年3月末まで、チキン南蛮バーガーのプロモーション行っている。
残念ながら、タイ人がこれを読んでも、どんな商品か理解できないだろう。
タイのモスは、「チキン南蛮バーガー」のタイ語名を、音そのままに「チキン・ナンバン・バーガー」としている。「チキン南蛮とは、鶏の唐揚げを、唐辛子入りの甘酢に漬けたものである」と知っているタイ人が何人いるのだろう? 商品がわからないのに、買う人がいますか?
同様に、ポークカツバーガーのタイ語名も、そのまま「ポーク・カツレツ・バーガー」となっている。これも「カツレツ」が理解されないだろう。
このように、タイのモスバーガーは、いろいろなところで、タイ人に伝えることを軽視しているように見える。
商品名が伝わらず、モスバーガーの魅力も伝わっていない。これが現状である。
タイ人大好きプロモーション。しかしモスは…?
タイ人は、割引のプロモーションが大好きである。そのため、飲食店に限らず、あらゆる小売店が、販売促進を狙って、さまざまなプロモーションを実施している。このようなプロモーションは、クレジットカードや電子マネー、携帯通信会社と提携して行われるのが一般的だ。
上の写真のドーナツ屋では、学生カードを提示すると10%引きになり、他にもクレジットカードや携帯通信会社の利用者は、割引が受けられる。
この本屋でも同様に、クレジットカードや携帯通信会社の利用者は、割引が受けられる。
マクドナルドも当然、こういったプロモーションを行っている。例えば、タイ・イオンが発行しているクレジットカードを使えば、セットメニューが79バーツになる、携帯通信会社DTACの利用者なら、セットメニューが99バーツになる、といったものである。
僕の知る限り、モスバーガーはこういったプロモーションをほとんど行っていない。
モスバーガーがやっているのは、昔ながらのスタンプカードだけである。半年内にスタンプを10個集めるとセット無料だったかな、月に一度は食べる僕ですら、条件が厳しくて、スタンプ集めを諦めた。
電子マネーやクレジットカード、使えないでしょうか…?
マクドナルドでは、クレジットカードや電子マネー、携帯決済も利用できる。クレジットカードは非接触なので、現金より速く支払いができる。また、電子マネーや携帯決済で払えば10~20%の割引も受けられるので、利用する客も多い。
一方のモスバーガーでは、クレジットカードも電子マネーも使用できず、現金のみである。
販促を行わず、クレカにも電子マネーにも対応しない。それでいいんですか?
がんばれ、モスバーガー!
まとめ。
タイのモスバーガーは、マクドナルドと同じ価格帯で、マクドナルドよりも美味しいハンバーガーを提供しているのに売れていない。その理由は3つ考えられる。
1つ目は、タイ人にモスバーガーの商品の良さや理念が伝わっていないこと。
2つ目は、販促不足。
3つ目は、クレジットカードや電子マネーに対応していないこと(とそれに付随する販促不足)である。
さんざん厳しいことを書いたが、僕はモスのファンだ。モスは美味しいハンバーガーを提供している。タイ人に理念を伝え、販促をうまくやれば、タイでも人気が出ると思う。モスがさまざまな手を打ち、タイで発展することを願っている。
モスバーガーとマクドナルドについて
モスバーガーとマクドナルドの歴史についても軽く触れておきたい。
モスバーガーは、櫻田慧氏(1997年没)が、アメリカのハンバーガーショップ「トミーズ」を参考にして創業した、日本発のハンバーガーチェーンである。
1972年に東京都板橋区成増で1号店をオープンした。
このブログの作者は、「全国飲食チェーン本店巡礼 ~ルーツをめぐる旅~」という本も書いている。
2018年2月には、モスバーガーの苦境を伝える記事も報道されている。
記事を読むと、販促が不十分と指摘されており、タイと通じる部分もあるように思えた。
一方のマクドナルドは、1940年にアメリカ・カリフォルニア州で、マクドナルド兄弟によって創業された。
面倒くさいチップをなくした明朗会計、皿洗いが不要で捨てるだけの紙容器、流れ作業で効率化されたキッチンなどは、マクドナルド兄弟による画期的な発明である。その後、レイ・クロックによってフランチャイズ化された。
その経緯はレイ・クロックの自伝に書かれている。
映画にもなっている。
アメリカから世界中に店舗を広げたのはご存知の通りだ。
批判もある。マクドナルドを代表とする、アメリカ的価値観、食文化に警鐘を鳴らす「スーパーサイズ・ミー」という映画も制作された。もう手遅れかもしれないが。
YouTube で「マックだけを食べ続けると」で検索すると、日本語吹替版を視聴できる。普通の映画としてもかなり面白いので観てほしい。吹替の大塚芳忠が最高だ。
みなさんの反応
ツイッターでみなさんからいろいろな反応・意見を頂いたので貼っておく。
タイのモスバーガーに客がいない3つの理由 https://t.co/nUcY5RxgjY @nisizawaさんから
#モスバーガー 出禁覚悟で記事を書いてみましたwここで皆さんに質問です。*タイ* のモスバーガーを利用したことがありますか?
— nisizawa (@nisizawa) February 19, 2018
僕のように月1回は食べているという人の割合が高くてビックリ。149票 x 18% = 27人もいるんですね。
以前は月2~3回とけっこう利用していましたが、ここ数年はぱったりです。
アンケートの回答から外れた内容なのでリプに送らせていただきました。
最寄りのモスが、忙しいときにケータリングの電話を取らなくなったのが原因です。— hilune (@hilune1) February 20, 2018
やっぱり店舗数が少ないゆえの知名度の低さでしょうか。タイ人ってそのへん結構ミーハーな気がします。
— ほりかわ (@hori0527) February 19, 2018
先月デリバリー頼みましたが、価格を考えるとバーキンのほうがよかったかなぁ
— ちゃーん (@okki_chang) February 19, 2018
年に一回と回答したものの、去年一年で換算すると4回くらいですー
ターミナルに用事あるときに、ついでに食べる、的なテンションです。でも食べてはみるものの、隣のサブウェイでよかったなぁ…って毎回思うのなんなんだろう(笑)— ららんな (@raranna_bkk) February 19, 2018
アマタに隣接してるので、二ヶ月に一回ぐらい。一番頻度が高いのがモーターウエイのバーガーキングで月1以上だと思います
— Nabejizo (@pssiam) February 19, 2018
一度行ったが、2度といかん。オニオンリングも衣があつすぎで別物!
— えなねこ (@enaneko_lolikon) February 19, 2018
モスは小さい。。。w
Arnosのランチバーガーがコスパ良いですしねー— ひゅるお肉 (@hyuru) February 19, 2018
今さら感満載…
タイ人にとって美味しいんですかね
日本人目線ですよね
台湾モス出資に変えた方がもっとローカル目線で成功すると思う
日本出資では無理でしょうね— daikok (@onlydake) February 19, 2018
それならローカルを使ってコスト削減してもっと内装や空間を手直しして欲しいです
閉鎖したチットロムなどの椅子をCTWやTerminal21に持ってくるだけでもまだ手直しになったのに…— daikok (@onlydake) February 19, 2018
コメント
なぜか画像が表示されないのですが。
それはそうと。
フューチャーパークのモスバーガー。
出来たときからお客さんが入っていなくて、いつ無くなるかと思ってみていたのですが、頑張っていますよね。
ちなみに私は、1回か2回しか行ったことがありません。
残念ながらnisizawaさんの分析には当てはまらず、私が行かない理由は、待ちたくないから。
高級ハンバーガーじゃないんだから、待たずにサクッと出てきてほしいのです。
カウンターで注文するファーストフードは、注文したカウンターでその場で受け取りたいのですよ。
Toshiさん、こんにちは。
画像のご指摘ありがとうございました。設定を間違えてましたので、修正しました。いまは見れると思います。
待ちたくないとのこと、そうですよね。それが理由という人もいますよね。
また、記事を書いてから、タイ人の舌に合っていないのでは、というご意見もいただきました。それももっともだと思います。