谷口狂至著「アジアマリファナ旅行」は辺境旅行記としても一級の面白さ

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(Wikipedia より ウィーン写本(1世紀)に記された大麻の図 Link

ちょっと面白い本を読んだので紹介したい。

題名通りのヤバい本である。

だが、読んでいるといろいろな面で面白い。

まず、作者の谷口狂至氏がかなり面白い人物だ。谷口氏はコミュ障を自称しており、普段はカンボジアの自室に閉じこもり、全く外に出ない。

外に出るのは、5~10日に一度、水が尽きたとき。シャワーを浴び、襟付きのシャツに着替えると、外に出かける。公共料金を払い込み、売人からマリファナを買う(笑)

社会への最低限の参加費用を支払った後は、これも身軽なうちに、ガンジャの取引きにゆく。ネタが尽きることはまずないが、外出の際に補充しておくのが常である。左ポケットには、イザというときのお目こぼしに相当するだろう額の札束、右ポケットには娘の身代金。

『アジアマリファナ旅行』より。以下同様

「娘の身代金」とは何言っているのかわからないだろうが、マリファナの代金のことを指している。

無事マリファナを調達したら、食料と酒も買い込んで、バイクタクシーで帰宅する。しかしバイクタクシーでは自室のあるアパートまで行かずに、手前の交差点で降りるという用心深さ。

そして自室に戻ると、ガムテープを1本使い切る勢いでドアの目張りをする。なぜかというと、ガンジャの匂いを外に漏れ出さないため(笑)そして自室でエロサイトを閲覧し、ネットゲームを遊び、マリファナを吸いまくる。そしてしばらく経つとまた買い出しに出かける。谷口氏は、この部屋が一番落ち着くと書く。

この本では、谷口氏はあらゆることをあっけらかんと書いてある。普通は自分の違法行為とか、プライバシーというのは書きたくないもの。それを突き抜けているところにこの本と谷口氏の面白さがある。

谷口氏の仕事はライターだ。金が少なくなると雑誌に旅行記を書いて稼ぐために旅に出る。しかしその旅行もただの旅行ではなく、マリファナを求める旅だ

谷口氏の旅もまた凄まじい。マリファナはアジアのほとんどの国では違法のため、マリファナを手に入れようとすると、当然ながら辺境の地、政府の権力が及ばない地に近づいていく。

例えば、谷口氏は2002年にアフガニスタンへ行く。普通の旅行者なら絶対行かない場所だ。パキスタンから行こうとしたところ、危険だから行くなとパキスタン人に真顔で止められている。谷口氏はそれでも行き、アフガニスタンのカブールに着いてみると、そこは軍隊とNGOしかいないほぼ戦場だった。

「こっこれがカブール……」  飛行機から見えるのは、廃墟のように荒れ果てた街並みだった。着陸すると、空港のはずれには撃墜された旧型の飛行機。そしてたくさんの国連機、多国籍軍が駐留するビル、米軍のものと思われる数機の戦闘ヘリの姿が……げぇぇぇ。コレ、戦場じゃない

谷口氏はアフガニスタンでもマリファナを入手し、そしてそれを持ったままパキスタンに入国する。

リュックの奥底のポケットに、パンツにくるんだハッピーセットをしまいこみ、いざイミグレへ。こんな辺鄙な国境で、荷物検査だの税関だのがあるとは思えないが、念のためだ。

おいおい、自分が密輸したこと、書いちゃっていいの?

さらにはパキスタンのトライバルエリアにも入る。ここはパキスタン政府の国家権力も及ばない無法地帯であり、かつてはオサマ・ビンラディンも潜伏していた。よっぽどの命知らずでないと行けない場所である。谷口氏はここの市場を現地の人に案内してもらい、マリファナ、アヘン、銃、偽札、偽造クレジットカード、偽造パスポートが販売されているのを目撃する。

しかし谷口氏には妙なこだわりもあり、マリファナ以外の麻薬には手を出さない。インドの日本人宿で、若い女性から、コカインを一緒にやろう!と誘われるが断っている。他の麻薬もマリファナと一緒に売られているので、難なく入手できるはずだが、頑なにやろうとせず、マリファナ一筋である。

谷口氏の著作はこれ1冊のみ。当時連載していたGダイアリーも廃刊になり、現在はマリファナ関係の記事を発表する場はなく、他のペンネームでライターをされているようだ。彼がまた面白い本を書いてくれることを期待したい。

最後に、大麻(マリファナ)についてすこし触れておきたい。現在は世界的に医療大麻、嗜好性大麻を解禁する流れが広がっている。しかし日本・タイ・ラオスなどでは依然として大麻の所持・使用は違法であり、決して手を出してはいけない。ラオスにいる知人からは、いまでもマリファナで捕まる日本人が後を絶たないと聞いている。

また、「大麻は常習性がない」と言う人もいるが、マリファナのエキスパートである谷口氏は次のように書いている。

マリファナ自体に、確かに「習慣性」はない。煙草のように「身体がニコチンを求める」という感覚はない。しかし、精神的な常習性は間違いなく、ある。

元常用者だった草加シンヤ氏も、著書『実録 ドラッグ・リポート』で、やはり精神的な常習性があると書いている。先人の言葉は聞いておくべきだろう。