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2018年3月5日、狂犬病による死者の発生を受けて、タイでは13県が狂犬病危険区域(赤色)に指定されました。黄色は注意区域です。
危険区域(赤色)に指定されたのは次の13県。
スリン、チョンブリー、サムットプラカン、チャチューンサオ、ナーン、ブリラム、ウボンラチャタニ、チェンラーイ、ローイエット、ソンクラー、ラヨーン、ターク、シーサケート
チョンブリー、サムットプラカン、チャチューンサオは日本人の方も多そうですね。ご注意ください。
狂犬病とは?
狂犬病は、発症すると致死率ほぼ100%という恐ろしい病気です。これまでに発症後の生存が確認されているのは世界でたった6人だけです。ただし、狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれたり、舐められたり、生肉を食べたりして感染しても、すぐにワクチンを接種すれば助かると言われています。
主な感染経路は、イヌ、ネコ、ウシ、ネズミなどですが、狂犬病はすべての哺乳類に感染します。動物に噛まれた場合に感染する可能性があるのはもちろんですが、爪を舐めたネコに引っ掻れただけでも感染する可能性があります。
もし動物に噛まれたら?
噛まれたり、引っ掻かれたり、舐められたりして感染が疑われるときは、
- まず傷口を石鹸水で洗い、
- 消毒液やエタノールで消毒してから、
- すぐにワクチンを接種してもらいましょう
タイでは、初回に接種するワクチンは大きな病院にしかなく、2回目以降に接種するワクチンは小さい病院にも置いてあることが多いです(筆者の体験)。初回は大きめの病院に行った方がいいでしょう。ただし、人間が予防接種を受けておくほどではないと思います。
2018年、タイにおける狂犬病の発生状況
タイでは毎年のように狂犬病による死者が発生していますので、いまだけでなく、常に注意が必要です。2018年3月5日のタイ Ch3 のニュース番組「3ミティ」から情報を抜粋しました。
タイでの死者数
- 2017年12月~2018年2月はすでに3名が死亡。場所は、ローイエット、スリン、ソンクラーの3県
- 2017年の死者は8名
- 2018年の死者は2名
狂犬病への感染が確認された動物(2017年~現在)
- イヌ:88.47%
- ウシ・水牛:7.49%
- ネコ:4.04%
狂犬病への感染が確認されたイヌ・ネコの内訳
- 飼い主あり:51.81%
- 飼い主なし:36.84%
- 不明:11.35%
飼い主ありが半数以上というのが驚きですね。飼い主には、飼い犬・飼い猫に狂犬病の予防接種をする義務がありますが、怠っている人が多いそうです。
ワクチン接種を受ける確率は…?
タイ保健省の資料によると、年間16.5万人(2012年)が、狂犬病が疑われる動物と接触し、狂犬病ワクチンの接種を受けています。タイの人口は約6千万人ですので、その確率は 16.5万人 / 6千万人 = 10万人あたり275人。
タイの交通事故は年間12.2万件(2002年)、交通事故死者数は人口10万人あたり36.2人(2015年)ですので、交通事故と遭う確率と同程度、交通事故で亡くなる10倍の確率で、狂犬病ワクチンを接種していることになります。
タイにおける狂犬病の歴史
1912年:タイで狂犬病が初めて確認される。亡くなった患者は王室の女性。これがワクチン工場建設のきっかけとなりました。
1929~1978年:年平均222人、計11,093人が狂犬病で死亡。
1980~2000年:下の表に示す通り、ワクチン接種者数の増加に伴い、死者が減少しました。
年 | 狂犬病ワクチン接種者数 | 狂犬病による死者数 |
---|---|---|
1980年 | 63,939人 | 370人 |
1990年 | 88,312人 | 185人 |
2000年 | 340,394人 | 50人 |
2000年以降:狂犬病ワクチン接種者数は10~30万人、狂犬病による死者数は4~50人程度で推移しています。
参照資料:
・タイ保健省疾病予防局発行「狂犬病の知識」(2011年1月)
・Suchon Jittanon, Prawat Rattanaphumma「狂犬病安全地区確立のための経験及び提言」(2012年11月)
狂犬病の感染源は?
タイ保健省疾病予防局は、「狂犬病接触者報告データベース」を作成して(資料)、狂犬病と接触した患者のデータを蓄積しています。
このデータベースでは、2012年には 166,090人分のデータを収集し、データの総数は 1,167,018人分になっています。統計的にも十分な数です。
このデータベースによると、狂犬病接触者が接触した動物の種類と割合は次のようになっています。
動物 | 件数 | % |
---|---|---|
イヌ | 944,978 | 82.5% |
ネコ | 155,811 | 13.6% |
サツ | 7,277 | 0.6% |
テナガザル | 584 | 0.1% |
ネズミ | 20,072 | 1.8% |
その他 | 9,267 | 0.8% |
記載なし | 6,853 | 0.6% |
ただし、この数字は患者と接触があった動物であり、すべての個体が狂犬病に感染していたわけではありませんのでご注意ください。同じ統計の別の項目を見ると、接触があった動物を捕まえて、10日以内に死んだケース(狂犬病の疑いが高い)は 6,944件、全体の 0.6%、死ななかったケースは 328,009件、全体の 28.1% です。
タイの目標:2020年までに狂犬病を撲滅
タイ畜産局が発行した資料(pdf:2.8MB) によると、タイ畜産局は、2020年までにタイの狂犬病を撲滅することを目標にしています。また、その資料によると、
- タイ国内での死者は、1980年に370人、2002年に30人、2008年に8人、2014年に7人と減少傾向
- アジアではイヌが主な感染源で、狐やコウモリの感染が確認される欧州とは状況が異なる。米国とカナダではスカンク、タヌキ、コウモリへの感染も確認されている
- 発展途上国での主な感染源はイヌ。他にも、ウサギ、リス、ラット、マウスにも感染はするが、確認された事例は少数
- タイでの主な感染源はイヌ、次にネコ
「サムットプラカーン県で無作為検査したイヌの80%が狂犬病に感染」
kapook.com の2018年3月5日付の記事 によると
『サムットプラカーン県では、過去3年間にすべての郡で狂犬病の感染を確認。これは、イヌやネコを飼えなくなった人が寺や各地に捨てて、捨てられたイヌ・ネコ同士で繁殖し、常に子犬・子猫が生まれているため、管理が難しいことが原因。地区内で50匹を無作為検査したところ、そのうちの80%から感染を確認した』
上の記事に対しては、根拠となる数字がないと反論する意見もあります。
まとめると、3月に入って確認された狂犬病の動物の数は、タイ全土で12。サムットプラカーン県は0。その獣医師の指摘(Facebookへの投稿)はこちら→ https://t.co/IeAjaM5QR4 内容は翻訳したので画像を貼っておきます。 pic.twitter.com/OcP4HUha0c
— 尻尾のない犬 (@inu_grapher) March 12, 2018
ペットの予防接種はどこで?
動物病院でやってくれます。
偽ワクチンに注意!
2014年に、偽物の狂犬病ワクチンや、偽造されたワクチン接種の証明書が摘発される事件がありました。ペットショップが費用を節約するために、偽ワクチンとは知らずに安いワクチンを購入して注射したり、証明書を偽造したりしていました。ワクチンは必ず動物病院で接種してもらいましょう。